宴は終わり。
長テーブルの端で賢二他数人の男が酒を飲んでいる他は帰った後のがらんとした部屋。むらさきと紫恋、それに高士が片付けをしている。
「高士はさ、父さんのことって知ってたの?」
むらさきが奥に引っ込んでいるのを確認してから、高士に小声で囁く。
「父さんのことって?」
「あの林田賢一って人と、兄弟なんだけど本当の兄弟じゃないって話」
「! それ、誰から訊いたの!」
「その林田賢一が言ってた」
「あ、ああ……」
「?」
高士の狼狽ぶりは、普通ではなかった。
「……なんかさぁ、もしかして私に隠してることってすごくたくさんあるんじゃない?」
「! ……この神社のことなんだから、姉さんは知らなくてもいいことだよ」
「む、そういうのやだな」
「じゃあ全部教えるから神社継ぐ?」
「それもやだ。つか両極端すぎ」
「うん、そうだね……」
食器を洗い場に置いて、高士は向き直る。
「俺は父さんからほとんどすべて聞いてるんだ。だから、姉さんが聞きたいことはなんでも教えられる」
「じゃあ一から全部教えて」
「……それはできないよ。話すことが多すぎるし、それに……いいたくないこともある」
「何それ、矛盾してる」
「いいじゃない、知らなくったって」
その声は、のれんをくぐろうとしてるむらさき。
「母さん?」
「自慢じゃないけど、私は全然知らないし」
「知らないって……お母さん、待逢家の後継ぎじゃなかったの?」
「後継ぎだったけど、私あんまり継ぐ気なかったし、父も全然私に教えてくれなかったし。代わりに賢二さんが来てくれて、神社のことは全部継いでくれたから」
「って、それでいいの?」
「いいんじゃないかしら?」
その笑顔に、悪気はない。
だから、その無責任さに腹が立つ。
「ああもうっ!!」
台所から大股で出て行く紫恋。
「あ、ちょっと……」
その声にも耳を貸さず、携帯を取り出しスイッチを押す。
『「うめ」は通話中で電話に出ることができません』
「!!」
思わず携帯を振り上げる。
その振り上げた手を、少しずつ降ろしていく。
「…………っ!?」
その頬が、濡れていた。
長テーブルの端で賢二他数人の男が酒を飲んでいる他は帰った後のがらんとした部屋。むらさきと紫恋、それに高士が片付けをしている。
「高士はさ、父さんのことって知ってたの?」
むらさきが奥に引っ込んでいるのを確認してから、高士に小声で囁く。
「父さんのことって?」
「あの林田賢一って人と、兄弟なんだけど本当の兄弟じゃないって話」
「! それ、誰から訊いたの!」
「その林田賢一が言ってた」
「あ、ああ……」
「?」
高士の狼狽ぶりは、普通ではなかった。
「……なんかさぁ、もしかして私に隠してることってすごくたくさんあるんじゃない?」
「! ……この神社のことなんだから、姉さんは知らなくてもいいことだよ」
「む、そういうのやだな」
「じゃあ全部教えるから神社継ぐ?」
「それもやだ。つか両極端すぎ」
「うん、そうだね……」
食器を洗い場に置いて、高士は向き直る。
「俺は父さんからほとんどすべて聞いてるんだ。だから、姉さんが聞きたいことはなんでも教えられる」
「じゃあ一から全部教えて」
「……それはできないよ。話すことが多すぎるし、それに……いいたくないこともある」
「何それ、矛盾してる」
「いいじゃない、知らなくったって」
その声は、のれんをくぐろうとしてるむらさき。
「母さん?」
「自慢じゃないけど、私は全然知らないし」
「知らないって……お母さん、待逢家の後継ぎじゃなかったの?」
「後継ぎだったけど、私あんまり継ぐ気なかったし、父も全然私に教えてくれなかったし。代わりに賢二さんが来てくれて、神社のことは全部継いでくれたから」
「って、それでいいの?」
「いいんじゃないかしら?」
その笑顔に、悪気はない。
だから、その無責任さに腹が立つ。
「ああもうっ!!」
台所から大股で出て行く紫恋。
「あ、ちょっと……」
その声にも耳を貸さず、携帯を取り出しスイッチを押す。
『「うめ」は通話中で電話に出ることができません』
「!!」
思わず携帯を振り上げる。
その振り上げた手を、少しずつ降ろしていく。
「…………っ!?」
その頬が、濡れていた。