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Machician - 第6話 祭の夜に (12)
「毎年の事とはいえ……」
 地元の人間とはいえ、合理主義者の紫恋にとって、それは無意味な行為に思えた。
 神社の境内の端、鳥居の向こう、車道へと下る長い石段。
 すでにその脇には人だかりができており、今か今かと待ちわびている。
わっしょい!
わっしょい!
 おなじみのかけ声と共に男達が神輿をかつぐ。鳥居をくぐり、その先、急な石段へとたどり着く。
 下を見れば、それは、真っ逆さまに落ちると錯覚してしまいそうな程の、角度。
 そこを。
わっしょい!
わっしょい!
 かけ声と共に降りていく。
 ゆっくりとではあるが、その斜めの御輿を数十人の男達が支え、急な斜面を下っていく姿は様になっており、まわりの群衆がかけ声に合わせて手を叩く。
わっしょい!
わっしょい!
「やっぱわかんないわ……」
 無茶なことをすることの意味はなんとなくわかっても、それでも、肯定する気にはなれなかった。
「と、仕事仕事」
 紫恋はカメラをシーバリウに向ける。
 御輿をかつぐ中では後ろの方ではあるが、それでも、十分な加重が掛かっているはずだった。
「……」
 思わず、モニターから視線を外し、直接シーバリウを見る。
 180近い背丈と色白の肌は、一見、華奢に見える。
 だが。
 全く無駄のない引き締まった体から、筋肉と一目で分かる膨らみが腕や足に出ている。
 芯の通った体躯が、御輿の重量を確実に支えている。
 鍛え上げられた肉体は、屈強な男達の中でも決して見劣りしない。
 むしろ。
シーバリウ様ー!」
 様ぁ!?
 群衆の中に、学校の後輩らしき人影があった。
「まぁ確かに王子様だから様もありだろうけど……」
 うめ、あんた結構恨まれてるかもよ……。
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