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Machician - 第10話 HACの街 (4)
「……うめだけ?」
 長い長い人混みを抜けた時には、手をつないでいたうめだけがそこにいた。
「ん……紫恋王子もいないみたい」
 所在なさげにまわりを見るうめは、ジャージの手をしっかり握って、離そうとはしていなかった。
「ま、向こうから連絡あるでしょ。こっちは先に終わらせましょ」
 と、ジャージうめの手を引き、うめはそれに素直についていく。
 二人が入った建物は、病院のように清潔で、張り紙がそこかしこに張られており、多くの人が歩いていた。
 その奥、エレベーターに乗って、うめは階数表示に驚く。
「……地下30階もあるんですか」
「研究施設は全部地下にあるからね。ま」
 二人は地下一階で降りる。
「手続き関係は全部この階だけど」
 そこはさらに人が多く、外からの光がロビーに差し込み開放的な空間になっていた。
「ここは結構普通なんですね」
「?」
「……あ、なんか……」
 うめは、見えない地上階を見上げる。
「なんかさっきのところ、ちょっと怖くて」
「そっか」
 確かに、うめの汗ばむ手をジャージは感じていた。
「ちょっと勇気なくなっちゃったのかも」
「それが普通なんじゃないの? あの犬を助けた時とか、ちょっと怖かったよ」
「あー……」
 窓口で手続きをすると、携帯端末に「18」という数字が浮かぶ。
「治療は3時半からだし……うめはなんかすることある? AP化のこととか」
「なんかカウンセリングみたいなのあります?」
 手を握ったり開いたりしながら、ジャージに訊く。
「まだ30%の強化しかしてないし、クラスの受講はもう少し先だから色々知らなくて。よく分からないんだけど、なんとなく体がちょっと痛い気がするし」
「応力集中かな、治療箇所を中心に強化しちゃってるから……ま、私みたいな素人は言わない方がいいか。あるよ」
 「2階 - APAC課」のプレートを確認してから、二人は再びエレベーターへと戻った。
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