「……うめだけ?」
長い長い人混みを抜けた時には、手をつないでいたうめだけがそこにいた。
「ん……紫恋も王子もいないみたい」
所在なさげにまわりを見るうめは、ジャージの手をしっかり握って、離そうとはしていなかった。
「ま、向こうから連絡あるでしょ。こっちは先に終わらせましょ」
と、ジャージはうめの手を引き、うめはそれに素直についていく。
二人が入った建物は、病院のように清潔で、張り紙がそこかしこに張られており、多くの人が歩いていた。
その奥、エレベーターに乗って、うめは階数表示に驚く。
「……地下30階もあるんですか」
「研究施設は全部地下にあるからね。ま」
二人は地下一階で降りる。
「手続き関係は全部この階だけど」
そこはさらに人が多く、外からの光がロビーに差し込み開放的な空間になっていた。
「ここは結構普通なんですね」
「?」
「……あ、なんか……」
うめは、見えない地上階を見上げる。
「なんかさっきのところ、ちょっと怖くて」
「そっか」
確かに、うめの汗ばむ手をジャージは感じていた。
「ちょっと勇気なくなっちゃったのかも」
「それが普通なんじゃないの? あの犬を助けた時とか、ちょっと怖かったよ」
「あー……」
窓口で手続きをすると、携帯端末に「18」という数字が浮かぶ。
「治療は3時半からだし……うめはなんかすることある? AP化のこととか」
「なんかカウンセリングみたいなのあります?」
手を握ったり開いたりしながら、ジャージに訊く。
「まだ30%の強化しかしてないし、クラスの受講はもう少し先だから色々知らなくて。よく分からないんだけど、なんとなく体がちょっと痛い気がするし」
「応力集中かな、治療箇所を中心に強化しちゃってるから……ま、私みたいな素人は言わない方がいいか。あるよ」
「2階 - APAC課」のプレートを確認してから、二人は再びエレベーターへと戻った。
長い長い人混みを抜けた時には、手をつないでいたうめだけがそこにいた。
「ん……紫恋も王子もいないみたい」
所在なさげにまわりを見るうめは、ジャージの手をしっかり握って、離そうとはしていなかった。
「ま、向こうから連絡あるでしょ。こっちは先に終わらせましょ」
と、ジャージはうめの手を引き、うめはそれに素直についていく。
二人が入った建物は、病院のように清潔で、張り紙がそこかしこに張られており、多くの人が歩いていた。
その奥、エレベーターに乗って、うめは階数表示に驚く。
「……地下30階もあるんですか」
「研究施設は全部地下にあるからね。ま」
二人は地下一階で降りる。
「手続き関係は全部この階だけど」
そこはさらに人が多く、外からの光がロビーに差し込み開放的な空間になっていた。
「ここは結構普通なんですね」
「?」
「……あ、なんか……」
うめは、見えない地上階を見上げる。
「なんかさっきのところ、ちょっと怖くて」
「そっか」
確かに、うめの汗ばむ手をジャージは感じていた。
「ちょっと勇気なくなっちゃったのかも」
「それが普通なんじゃないの? あの犬を助けた時とか、ちょっと怖かったよ」
「あー……」
窓口で手続きをすると、携帯端末に「18」という数字が浮かぶ。
「治療は3時半からだし……うめはなんかすることある? AP化のこととか」
「なんかカウンセリングみたいなのあります?」
手を握ったり開いたりしながら、ジャージに訊く。
「まだ30%の強化しかしてないし、クラスの受講はもう少し先だから色々知らなくて。よく分からないんだけど、なんとなく体がちょっと痛い気がするし」
「応力集中かな、治療箇所を中心に強化しちゃってるから……ま、私みたいな素人は言わない方がいいか。あるよ」
「2階 - APAC課」のプレートを確認してから、二人は再びエレベーターへと戻った。