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Machician - 第10話 HACの街 (6)
「今、山田さんの筋力はこのように偏っています」
 白衣を着た医師が、ホログラフィを指し示す。うめと同じ背格好のキャラクターがくるくるとまわり、その表面は赤い箇所と青い箇所とがある。
「筋力は全体のバランスが大事なんです。腕を曲げるだけでも、内側と外側の筋力が合っていないと、肘が痛むといった症状が現れます」
 神妙にうめはうなずく。すぐ側にはジャージが座り、その手は継ないだままだった。
「骨折箇所の筋力は健康時の80%ですが、背筋は130%になっています。故障しないように少しずつ筋力が上がっていますが、それでもひずみが生じて痛みが出てくることもあるんです」
 確かに、そのホログラフィは、足下が青、そこから上体に向かうに従って赤くなっていた。
 頭寒足熱、という言葉がジャージの頭をよぎった。
「どうします? 痛覚調査をして痛みを取り除くこともできますけど」
「どう?」
「そろそろだけど」
 携帯端末には「3」と表示されていた。
「いえ、今日はここまでにしておきます」
「わかりました。またいつでも来てくださいね。ネットでも構いませんから」
「ネット?」
HACのカタログネットワークです。会員証と対応端末があればいつでもアクセスできますから」
「あ、はい、分かりました」
 お辞儀をしながら部屋を出つつ、お財布からHACの会員証を取り出す。
「これってそういう機能もあるんだ」
「というかこれがないと何もできないんだから。で、今日はその継続に来たわけ」
 と、ジャージも自分の会員証を見せてから、口にくわえる。
「継続しないと使えなくなるんですか?」
「そう、最近厳しくて半年に一回だし」
「結構面倒なんですね」
「そりゃあ、それだけの対価が得られるんだから」
 さらにがさがさと、自分のバッグをあさって、中から書類やディスクを取り出す。
「持ちましょうか?」
 うめが書類の束を受け取り、それでもディスクや携帯端末、会員証といったこまごまとしたものを器用に右腕全体で抱えていた。
 それをそのままカウンターへと持っていってどしゃっと置き、さらに書類を係の女性に渡す。
「すみません、継続手続きお願いします」
「はぁ……」
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