「ワイバーンの軟骨揚げと嗚咽窟茸のソテー、それと愛欲の涙」
「フィナードとアベンツで」
オープン長屋の2階、色とりどりの料理がホログラフ広告で舞うレストラン「玉座」、その窓際というか外際の席で、紫恋とシーバリウはオーダーを頼んでいた。
「王子の頼んだの、食べさせてね」
「はい、いいですよ。できれば紫恋さんのも」
「うん、ものすごく怪しそうだよねー」
と言いつつ、紫恋はとても嬉しそうで、その笑顔にシーバリウは苦笑いしていた。
「そのフィナードとかって、美味しいの?」
「美味しいというほどではないのですが、小さい頃よく食べていたので」
「故郷の味ってわけね。こっちのはどれも食べたことないの?」
メニューの左半分のページを指さす。
「ありませんよ。ワイバーンってなんです?」
「ドラゴンみたいなのじゃなかったかな、羽根の生えた、翼竜」
「龍ですか……それですと、神に近い存在ですし、龍の肉を食べた者は五代遡って呪い殺されるという話から、無限の魔力と不老不死を得られるという話まで様々ですから」
「それはまたすごいね」
「愛欲の涙というのは聞いたことがあります。確かトンブーの…………………………」
「……………………うむ、言わんでいい」
「はい」
料理が来るまでの間に、視線は自然と外へと向けられる。オープンカフェのような見晴らしの良さ、吹き抜ける風、階下の喧噪、向かいの店々に並ぶ見たこともないような商品、それはただ眺めるだけでも十分楽しめるものだったから、少しの間会話を途切れさせても気にはならなかった。
「……紫恋さん」
「ん?」
と言われるまで会話がなかったことすら気にならなかったが、シーバリウの表情に、紫恋は少し緊張する。
「なに?」
「……紫恋さんは、とうち、っていう名前、知ってます?」
「とうちって、外内事件の外内?」
「外内事件?」
「そう、3年前かな……そのもっと前からだけど、上扇木 と外内っていう、2つのヤクザっていうかマフィアがあったの」
「マフィア……?」
「そりゃもう大変だったんだから、その頃ってAPとかHACとかがちょうど出てきた頃だったから、そういうので抗争しまくって、住宅街で撃ち合いとかして、JCTHUも出てきてちょっとした戦争みたいな感じだったんだから……で、3年前」
「何があったんですか?」
「潰されちゃったのよ、HACに」
「フィナードとアベンツで」
オープン長屋の2階、色とりどりの料理がホログラフ広告で舞うレストラン「玉座」、その窓際というか外際の席で、紫恋とシーバリウはオーダーを頼んでいた。
「王子の頼んだの、食べさせてね」
「はい、いいですよ。できれば紫恋さんのも」
「うん、ものすごく怪しそうだよねー」
と言いつつ、紫恋はとても嬉しそうで、その笑顔にシーバリウは苦笑いしていた。
「そのフィナードとかって、美味しいの?」
「美味しいというほどではないのですが、小さい頃よく食べていたので」
「故郷の味ってわけね。こっちのはどれも食べたことないの?」
メニューの左半分のページを指さす。
「ありませんよ。ワイバーンってなんです?」
「ドラゴンみたいなのじゃなかったかな、羽根の生えた、翼竜」
「龍ですか……それですと、神に近い存在ですし、龍の肉を食べた者は五代遡って呪い殺されるという話から、無限の魔力と不老不死を得られるという話まで様々ですから」
「それはまたすごいね」
「愛欲の涙というのは聞いたことがあります。確かトンブーの…………………………」
「……………………うむ、言わんでいい」
「はい」
料理が来るまでの間に、視線は自然と外へと向けられる。オープンカフェのような見晴らしの良さ、吹き抜ける風、階下の喧噪、向かいの店々に並ぶ見たこともないような商品、それはただ眺めるだけでも十分楽しめるものだったから、少しの間会話を途切れさせても気にはならなかった。
「……紫恋さん」
「ん?」
と言われるまで会話がなかったことすら気にならなかったが、シーバリウの表情に、紫恋は少し緊張する。
「なに?」
「……紫恋さんは、とうち、っていう名前、知ってます?」
「とうちって、外内事件の外内?」
「外内事件?」
「そう、3年前かな……そのもっと前からだけど、
「マフィア……?」
「そりゃもう大変だったんだから、その頃ってAPとかHACとかがちょうど出てきた頃だったから、そういうので抗争しまくって、住宅街で撃ち合いとかして、JCTHUも出てきてちょっとした戦争みたいな感じだったんだから……で、3年前」
「何があったんですか?」
「潰されちゃったのよ、HACに」