「侵入者……は、お前達ではなさそうだな」
それは、背に無数の羽根を持つ魔物だった。
黒いビロードのような体毛に覆われた、かろうじて人型の魔物。顔は犬のそれに似ている。背丈は人の二倍ほど、その体躯に16の羽根を生やす。丸太のように太い足、その後ろに第三の足とも言うべき、巨大な尻尾がのたくっていた。
「あ、あなた様は……?」
うめには、その声がうわずっていることが分かった。
「サナツカ。このあたりの窟を管理している。侵入者がいるらしく来てみたのだが……さて、おまえ達は?」
「私はフーディン様がお造りになられた43214298702838番目の子供です」
「ほう、懐かしい番号だな。もう一人は?」
「……え?」
うめは周りを見回す。
『もしかして、私の事?』
「そうだお前だ」
「!」
うめの、聞こえないはずの声が届いていた。
「ええと、私は……」
(馬鹿、しゃべるな!!)
「! え、ええと……」
指摘されて言うのをやめる、が、嘘は苦手だった。
「……いや、いい。43214298702838番は廃棄とする」
「!?」
無数に生えた翼の一組が音を立てて育っていく。羽根は天高くそびえ立ち、毛羽だった面が、うめを向いた。
「……生きろよ」
『え』
うめは後ろへと跳び退き、柱から落ちる。サナツカの影となる位置を落下する間に、うめの額から、赤い石が外れる。
「あ!」
体の自由が効くことを確認する。
瞬間。
紺色の木々がうめの頭上に降り注ぐ。
「っ!」
柱を蹴って距離を取る、その先にも、棘の付いた金網のように黒い枝々が覆い被さってくる。
その枝を無理矢理殴りつける。
「!!!」
手応えなく、右腕は絡め取られ、血煙を上げてバラバラに折れた。
それは、背に無数の羽根を持つ魔物だった。
黒いビロードのような体毛に覆われた、かろうじて人型の魔物。顔は犬のそれに似ている。背丈は人の二倍ほど、その体躯に16の羽根を生やす。丸太のように太い足、その後ろに第三の足とも言うべき、巨大な尻尾がのたくっていた。
「あ、あなた様は……?」
うめには、その声がうわずっていることが分かった。
「サナツカ。このあたりの窟を管理している。侵入者がいるらしく来てみたのだが……さて、おまえ達は?」
「私はフーディン様がお造りになられた43214298702838番目の子供です」
「ほう、懐かしい番号だな。もう一人は?」
「……え?」
うめは周りを見回す。
『もしかして、私の事?』
「そうだお前だ」
「!」
うめの、聞こえないはずの声が届いていた。
「ええと、私は……」
(馬鹿、しゃべるな!!)
「! え、ええと……」
指摘されて言うのをやめる、が、嘘は苦手だった。
「……いや、いい。43214298702838番は廃棄とする」
「!?」
無数に生えた翼の一組が音を立てて育っていく。羽根は天高くそびえ立ち、毛羽だった面が、うめを向いた。
「……生きろよ」
『え』
うめは後ろへと跳び退き、柱から落ちる。サナツカの影となる位置を落下する間に、うめの額から、赤い石が外れる。
「あ!」
体の自由が効くことを確認する。
瞬間。
紺色の木々がうめの頭上に降り注ぐ。
「っ!」
柱を蹴って距離を取る、その先にも、棘の付いた金網のように黒い枝々が覆い被さってくる。
その枝を無理矢理殴りつける。
「!!!」
手応えなく、右腕は絡め取られ、血煙を上げてバラバラに折れた。