KAB-studio > Machician > 第12話 たったひとつの確かな理由 (21)
Machician - 第12話 たったひとつの確かな理由 (21)
 シーバリウは剣を抜く。サナツカを覆った光の布は硬化し拘束していた。
「……それでは、我々は行きます」
「なら、今度は追い掛けっこだな。この程度、数分もあれば解ける」
「それまでにはここを去ります。できたら、手加減をお願いします」
「断る」
 サナツカの口元は、笑っているように見えた。
シーバリウ!!』
 ジャージ達がシーバリウの方へと駆けてくる。周りにいる黒い獣は、動きを止めていた。
「皆さん、今のうちにここを退去します! 封印できる時間はあまりありませんから今のうちに!」
「ええっ!? そう言うことは早く言ってよ!!」
 うめは立ち止まり、反転して出口へと向かう。
うめ、私が運ぼうか?」
「飛ばなくていいんなら私の方が早いと思うよ? もうだいぶ慣れたし」
 こちらに来て、力の使い方に慣れていた。そういえば、そのきっかけを作ったのは……。
「……」
 目の端で、崩れて粉々になった岩を見る。
 ……聞こえる?
 返事はなかった。
 ……もし自分の中にまだいるのなら、またいつか会えるよね。……ううん、いつかまた、ここに来るから。
 視線を前に戻す。円柱が立つ部屋の端から通路へと駆ける。細い通路には、幸運にも獣がほとんどいなかった。
うめーっ、私おんぶして!」
「なんですとー!?」
 狭い通路では、紫恋の羽根は目一杯羽ばたけなかった。
「道分かります!?」
『大丈夫、ワースがちゃんとマッピングしてくれてるから』
「良かったー」
『道が変わってなければの話だけど』
 そういえば、獣が現れたときには、壁の石が移動していた。それが丸ごと移動して、道が変わっていたら……。
「……多分大丈夫!」
「根拠ねー!」
 紫恋をおんぶするうめとおんぶされる紫恋は、なぜかテンションが高かった。
「あ、あれ!!」
 通路の先に、緑色の帯。
 宙を疾るイヴァンディの帯が、帰り道を示していた。
 その帯が。
「!!」
 脇からスライドした石によって壁へと叩き付けられ、そこに、サナツカが現れる。
「追い付いた、な」
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