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#pragma twice 002 Version 0.2 4月のある朝、のつづき

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 Version 0.2 
4月のある朝、のつづき

 2001年4月18日、同じ日の午前11時半。
削除します
 金菜は目を剥いて言い放った。
ちょ、ちょっと待ってください
 そのプレッシャーに気圧されながらも、水希は言い返した。
サーバーに2ギガものファイルを置いておくわけにはいきません
でも50メガから2ギガですよ、そんな圧縮法があるっていうだけでも置
いておく価値ありません?
だいたいこれは権利不所持者による無断侵入に該当します。それだけでも
ここを辞めてもらう理由になると思いますが?
そんなこと言ったって……
ねぇ、もう少し解凍したいんだけど
ダメですっ!!
 金菜のその様は子供を叱りつける母親のようだった。
……ねぇきみ、どうやってサーバーに入ったの?
 金菜は少しのけぞり、少女は少し経ってから答える。
<ここに来てからまずすること>の中にあったのよね。ああすれば、サー
バーに入れるようになるって
……ってことは先輩、抜け道作ってましたね?
ななな何の事かしら
この娘がなんで知っていたかは分からないけど、金菜先輩は鍵が開けっぱ
なしの秘密のドアを作っていた……
ごほん、まぁ2ギガくらい余裕あるから、とりあえずは削除しなくていい
けど
だから、もう少し解凍したいんだってば。あと2ギガくらい
 歯を食いしばり怒りをこらえる金菜を、水希は苦笑いして見守るしかなかっ
た。



あったよー!
 雅美が走って持ってきたそれは、1年ほど前にはやったCCDカメラだっ
た。それをモニターの上に乗せ、USBコネクタを差し込む。運良くドライ
バがあった。
おっけー、ちゃんと見えるよ。自己紹介よろしくぅ!
……ったく、ただのソフトのクセしてよくしゃべるわ
まぁまぁ。えっと、僕は端波水希。って知ってたみたいだけど
私は御神苗雅美。今度私のデスクトップにも来てね
うん、水希ちゃんのデスクトップって個性なくてつまんないんだもの
水希……ちゃん……
近藤透。ま、名前くらいは憶えとけや
あんたのデスクトップにも行ってあげるね
いらんわ!
そうそう、君の名前は?
 カーソルが砂時計に変わる。
現在検索ちゅー。っていうか、はっきし言って分からないのよねー
分からないって……
これだけのデータ量でしょ? 一応私が動ける最小限のファイルは解凍し
たけど、それ以外の、ちょっととりあえずおいといていーやっていうファイ
ルはアーカイブの奥の奥なのよね。少しずつ解凍して探していくけど……あ、
名前……私の名前は……
 砂時計が回り、ハードディスクのランプが点滅する。
分かんないや
なんでやねん! ったく、なんかムカツクこいつ!
でも名前ないと呼びにくいなー。なんか……
 水希は、今は最大化表示されている、少女のいるウィンドウを見つめる。
とにかくインパクトがあるのは、
髪の毛……
 真っ赤に染まり、左右がシンメトリックでない、かなり奇抜な髪型。手前
から見て右半分は顎の方まで垂れ下がり、左半分は真上へと跳ね上がってい
る。その様は、
火が燃え上がっているみたい……<かみ>って、どう?
 水希はキーボードを打ち、<火美>と変換した。
火美ちゃん、いー感じ! 私それにする!
火美ね、悪くないんじゃない?
そっかー? 読みも変だし、だいたいどっから<美>が来るんだ?
透ちゃんって眼が悪いんじゃないの?
だからちゃん付けで呼ぶな!
えーでも、そう呼ぶシステムになってるのよね。拡張子みたいな?
オレたちゃファイルか……
まぁまぁ。でさ、火美ちゃんって、どういう理由でここに来たの?
さぁ



あ、メール来たよ
 旗が上がり、水希はメーラーを開く。
……気象庁からだ……
なになに? えーと、メールが発送されたことは確認したけど、誰が発送
したのか、そもそもこのファイルがどうやって持ち込まれたかすら分からな
い、ってことあるの?
メールサーバーしかないから不正侵入はない、って書いてあるけど、メー
ルサーバーにセキュリティーホールがあることもあるし、証拠が消されてい
るのかもしれないからなんとも言えないけど……ところで……
火美ちゃん、って呼んで、水希ちゃん
……火美、ちゃん、勝手に人のメール見ないでくれる?
 マウスカーソルが動き、メールが次々と表示される。そこに割り込んで、
メーラーを無理矢理閉じる。
あー。でもつまんないメールばっかだった
そりゃ大事なのはここを通さないもの。なんか不安だなー、外に出ちゃダ
メだぞ?
分かったわよぉ。それに、私だってあんまり詳しい方じゃないし
そうなの?
できることはマウスカーソルを動かしたり文章読んだりとか。ま、よーす
るに人並みってとこね
それが十分すごいんだが……。なんか手伝ってもらおうと思ってたんだけ
どなー
あ、お手伝いしたい!! 何をしたらいいのか分かんないし、アーカイブ
調べるのもつまんないし。ところで水希ちゃんって、何してる人なの?
僕は、ここ、TMIITっていう学校の生徒だよ。プログラミングの勉強
してるんだ
プログラミングって、要するに私みたいなのを作ることだよね
……まぁ、そういうこと。勉強って言っても、僕は一度会社入って一通り
のことはできるから、ここではもっと専門的なことを学ぶつもりなんだけど

へー、難ずかしそー
難しくなんか、全然ないんだけどね……
 ふっと見せた、寂しい表情。
……なんか、あったの?
……
ヒープがフラグメントしてて居心地悪いとか
どんな悩みやねん!
ねーねー、水希ちゃんって結構プログラミング得意?
まぁ、それなりにはね
じゃぁさ……




で、結局どうすることになったの!?
 紅陽の差し込む28階、3人の元に金菜が来る。その表情は明らかに苛立っ
ていた。
あ、火美ちゃん、あ、そういう名前になったんですけど、火美ちゃんが今
動かすのに使っている分は1.3ギガ位なので、このPCの中に置いておき
ます
サーバーにコピーしたのは、DVD−Rに移して、少しずつゆっくりと解
凍することにしたから
当然です
 きっぱりと金菜は言った。
でね、アーカイブの中から<本当の目的>が見つかるまで、ここで水希ちゃ
んのお手伝いすることにしたから
手伝い?
プログラミングの勉強をしたい……んだそうです
 透はぶっきらぼうに言い放ち、金菜は理解できず、水希は苦笑いし、雅美は
はてなマーク。
でさ、なんでそれがすごいことなの?
だって、<プログラム>っていうのは<決められたことを、決められたと
おりにするだけ>なんだもの。でも火美ちゃんもプログラムだから、プログ
ラムを作るには、そのプログラムそのものが元々なくちゃいけないわけで…

つまりだ、人間にしかできないはずの<無からの創造>ってもんを、コイ
ツはできるって言い張ってるんだよ
知識はないけど、憶えれば作れる自信あるよ。私のこと解剖して調べれば
ノーベル賞ももらえるんじゃない?
自分で言わないでよ……で先輩、許可してもらえます? 金菜先輩?
 目があさっての方向を向いたままの金菜の金色の髪を、紅色の陽光がきら
めかせていた。

/*
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*/
さて、いよいよ次回から、プログラミングの解説がスタート!
その間に読者いなくなりそうで不安だったのよねー
小説部分の方がいいっていう読者は?
ふ……現実って、厳しいよね……
……
というわけで次回!!
< Version 1.0 アプリケーションって、なに? >
は、やっぱ読まなきゃ!!
これからはあたしと水希ちゃんしか出ないのよねー
金菜先輩が出ないと誰も読まなかったりして
えええっ!?
そこまで動揺せんでも……
 
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このページは、Visual C++ 6.0を用いた C++ 言語プログラミングの解説を行う#pragma twiceの一コンテンツです。
詳しい説明は#pragma twiceのトップページをご覧ください。