2. コンテ
 
1コマ目  
■コンテ
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 さて、ここから実際のほとはーの制作に入ります。
 まず前回のテンプレートファイル( テンプレート.psd )を複製し、ファイル名を変えてから開きます。
 次にツールプリセットの「鉛筆(03)」で「ラフ」レイヤーに「コンテ」を描きます。
 「コンテ」というのは話の流れを表す絵のことで、一般的には映画とかドラマで使われる用語です。マンガ用語だと「ネーム」ということが多いと思います。もっと一般的に言うと「下描き」になります。
 コンテはマンガの設計図となるため、非常に重要です。この段階でマンガの出来が8割方決まると言っても過言ではありません。
 
愛機・ SHARP Zaurus MI-P1-V  
■ネタ出し
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 コンテを切るためには、当然元となる話、つまりストーリーが必要になります。
 今回のおはなしはこの講座専用のものということで、メインキャラ3人、オチはパプリカという大安定なものを用意しました。
 僕は直感8割理論2割の人間なので、この話も「ポン!」と浮かんだものです。ただ、オチの部分がちょっと弱いので、保留しつつ色々なオチをとっかえひっかえしてこれからどうするか決めようと思います。
 この「話の作り方」は人それぞれ違うと思います。直感派、理論派、自分に合った方法でお話を作りましょう。
 
 ちなみに、特に直感派の人はある日突然おはなしが頭に浮かぶものなので、そういったものを常にメモれるようにしておきましょう。僕は電子手帳(ザウルス)を使って管理しています。
 
「起承間転」の例  
■縦のリズム
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 実際にネタを考える時には、おそらく同時にコマ割りも考えることになると思います。
 変則的な方法を使わない限り、当然話を4つに分けることになります。普通のストーリーであれば「起承転結」で構成して、ひとつひとつを1コマに割り当てることになると思いますが、それは4コマには向きません。4コマは笑えなければいけないので、最後の4コマ目にオチが必要です。のんびりと「結」なんてしてられません。
 
 そこで、最後の4コマ目に「転」を持ってくる構成で話を組み立てましょう。一般的には「起承承転」や「起承間転」というパターンがよく使われます。今回の話は後者を使ってます。「起」でスタートし、「承」で話を進め、「間」で1テンポ置いて注意を引きつけ、「転」で意外な方向へ持っていきオチを付ける、という具合です。
 まぁこれは基本的なパターンです。もっと意外な展開にしてもいいでしょう。僕が好きなパターンは「転起承転」や「起転承転」というボケ2回のパターンです。軽いボケの後にどすんと来るボケ、というのは美味しいです。が、なかなか思い付かないパターンだったりします……。
 まぁ、4コマは数多く描かなければいけないので、安定パターンは自分のものにして、うまく使い回せるようにしましょう。
 
8拍子  
■横のリズム
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 4コマと言っても、実は4拍子ではありません。実際は8拍子です
 各コマは2拍子です。右と左に分かれて、各1拍子受け持ちます。
 
「ん?」(2) (1)気付くもみ
「見られてる」(4) (3)「どうした?」
気付くふたり(6) (5)パプリカ
!?(8) (7)「裏にカンペ」
 
 必ず右から左に流れます。右、左、右、左、右、左、右、左、と、全部で8拍子になるわけです。
 これを踏まえて、セリフ、キャラの立ち位置、記号(気付く時のちょんちょんや、矢印、ビックリのこと)もすべて右から左へと流れるように配置します。すべての構成はこの流れを中心に決めるようにしましょう。
 これは結構セオリー中のセオリーで、崩すのはかなり難しいです。たとえば、もみのセリフを1コマ目に、パプリカのセリフを2コマ目に描くと、1コマ目と2コマ目のあいだに「」ができます。
 意味のない「間」だと思いっきり浮いてしまいます。このセオリーを崩すためには「間」と感じさせない方法が必要になるのですが……あるのかなぁ。
 
雑です  
■下描きじゃない
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 コンテは決して「下描き」じゃありません。あくまで主線を描く際の目安です。
 この段階ですごく丁寧に描くようだと、完成までちょっと時間が掛かりすぎると思います。最初のうちはそれでもいいですが、描き慣れるに従って少しずつ手を抜けるようにしてください。そうしないと本数こなすのはキツイです……。
 ただし、かなり雑、というのも最初は難しいです。僕の場合は、吹き出しとキャラの大きさはちゃんと取っておくようにしてあります。吹き出しはコマの中での配分として重要です。また、キャラの大きさを誤ると頭が大きくなったり首が長くなったりとへんてこになってしまいます。サイズは簡単に変えられるので、この段階でちゃんとしておきましょう。
 
 ちなみに、本当のマンガ家さんのネームはかなり雑な物が多いですが、あれはたぶん、実際には必要ないのだと思います。編集さんにストーリーを提示するためとか、アシスタントに指示を出すためで、自分で描く分には必要ないかなーと。
 そう考えるとウェブ4コマなんてさらに必要ない……はずですが、まぁ僕はまだ画力足りないので描くことにします(汗)。
 
コンテ完成  
■まぁ描こう
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 以上を踏まえて、がしがしと描いていきます。
 ツールは WACOM intuos i-920 。A4サイズの一般的なタブレットです。
 グラフィックアプリは Adobe Photoshop CS 。ペンは筆圧オンで細めかつ柔らかめの、鉛筆っぽいものを使用しています。色は黒。このあたりは当然好みで変えましょう。
 そうして完成したのがこれ。
 
サンプルA(コンテまで) 1.95MByte
 
 30分くらい掛かりました。ネタとセリフを考えつつ描くのでそのくらい掛かります。ただ、描く前のネタ出しから考えると倍以上は掛かっています。まぁそれはどこにいてもできるので、通勤・通学時間とかを有効利用しましょう。
 
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[COLUMN] タブレットに慣れる方法
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 ほとはーは最初から最後までタブレット直描きで描いています。
 下描き・主線をタブレットで描くメリットは「アンドゥ・リドゥが効く」「トレースが簡単」「複製が簡単」「移動・リサイズ・コピペが簡単」「ペンツールできれいな線が引ける」「手が汚れない」「物を消費しない」「物が足りない、ということがない」などなど、かなりあります。
 タブレットを使うことでのデメリットはありません。時間を掛けて練習すれば手描きと同様の表現はできるようになります。問題はその移行期間をどうするか、でしょう。もしその期間が長すぎればそれはメリットを上回るデメリットになってしまいます。
 僕もタブレットに慣れるまでは結構苦労しました。もちろん今も苦労してますが、それでもちょっとしたことに気付くだけでだいぶ違います。以下は、その気付いたことです。
 
1 つるつる
 タブレットの表面はつるつるしています。紙特有のざらざら感がないため、滑りすぎて描きにくいことがあります。
 対策としては、実際に紙を貼ったり、もしくはその代わりの物を貼るというのがあります。僕ややったことがないので何を貼ればいいのかはわからないですが、やっている方は結構いるはずなので、試してみては。
 
2 画面とずれる
 紙と違い、タブレットで描いたものは(タブレットではなく)画面に表示されます。そのため、描いた絵とずれてしまうことがあります。
 タブレットは、ペン先をタブレットの表面に近づければカーソルを動かせる仕組みになっているので「描く前に一度振る」という描き方を身に着けるのがいいかもしれません。そうすればこれから描く線がどう引かれるのかだいたいわかります。だいたいですが。
 あとは Cintiq を使うことでしょうか。僕はマルチディスプレイ派なので使ったことはないのですが……。
 
3 解像度
 タブレットは、マウスカーソルの代わりです。マウスカーソルは、画面の点を指すためのツールです。ということは、どんなにがんばっても画面の解像度よりも細かい操作はできないということです。
 そのため、画面の解像度はできる限り細かくする必要があります。そうしないと、手ぶれの影響が大きく出てしまい、絵が汚くなってしまいます。
 タブレットもできるだけ大きいものにしましょう。タブレットが大小も解像度と同じなので、小さいほど手ぶれの影響を受けます。少なくとも画面と同じくらいのサイズにはしましょう。
 さらに、絵のサイズも大きくしましょう。これも同じ理由です。ほとはーは元々のサイズは 2000x5000 pixel です。画面出力時の5倍です。このくらい大きくした方がいいでしょう。
 
4 ズーム
 人間の目はズームが効きます。紙に描いた絵を注視すれば、細かいところまでよく見えます。
 ところが、CGの場合はそうはいきません。どんなに注視しても、画面の解像度よりも細かくは見えません。細かく見るためにはズームする必要があります。
 ところが、ズームをすると、絵が大きくなります。それはつまり、線を描く長さが長くなるということです。長くなると手を大きく動かさなくてはならないため、きれいな線が描きにくくなります
 このジレンマはかなり問題で、細かいけど大きい絵を描きたい時の悩みどころです。これははっきり言って解決できないので、これがどうしても嫌なら紙で描く方がいいかもしれません。
 ただ、解像度を上げることである程度はカバーできます。解像度を上げれば「注視した時のズーム」がより効くわけですから。また、拡大縮小を使ってから丁寧に主線を描いたり、ペンツールを使うことで解決する、ということもできます。
 
5 描く位置
 紙は自由に動かすことができます。移動は元より、回転も簡単にできます。
 が、CGの場合はそれがままなりません。絵の移動は絵の端がはみ出るようにはできません。そのため、上の方の絵はタブレットの上の方で描かなければなりません。また、回転はできなくもないですが、すると画質が落ちてしまいます。
 前者の問題は Photoshop CS にバージョンアップすることで解決できます。 CS になってから、絵を画面端まで移動できるようになったためです。このためだけでもバージョンアップする価値はあると思います。
 後者の問題はいくつか方法があります。ひとつは Cintiq を使うこと。これなら回転できます。ふたつめは下描き時に回転させちゃうこと。下描きレベルであれば画質が落ちても問題ないでしょう。まぁ主線描く時に問題になりますが……。
 
 以上が、タブレットを使う上での注意点です。タブレット使いにく〜と思ってる方は、これを参考にタブレット嫌いを克服してみてください。
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