3. セリフ
 
2コマ目  
■セリフ
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 コンテが描けたら、次はセリフです。
 セリフは、言わずもがなですが、キャラクターがしゃべる言葉と、それを入れる「フキダシ」のことです。
 なぜこのセリフを先に描くのか、と思うかもしれません。まず絵を描いて、そこにセリフを入れればいいじゃないか、と。でも効率性を考えるとセリフを先に描いた方がメリットがあります。なぜなら、フキダシをうまく使うことで絵を描く量を減らせるからです。
 
 フキダシは画面の6分の1から、時には半分近くを占めることもあります。このフキダシをうまく利用することで体を描かずに済ませたりすることができます。先に絵を描いてしまうと、せっかく描いた部分が表示されないということもあります。また、逆に「フキダシを描いたら顔が欠けちゃった」というミスを避けることもできます。
 というわけで絵を描く前にセリフとフキダシを描いてしまいましょう。
 
レイヤーパレット  
■テキストレイヤーは準備しておく
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 フォトショでは、文章はテキストレイヤーに書き込みます。このテキストレイヤーはあらかじめ用意しておきましょう
 テキストを書く際にはフォント、サイズ、行間の幅等、細かな設定が必要になります。それをいちいち設定していると大変ですし、設定を間違えてしまうと各話毎の差ができてしまいます。それを避けるために、基本的な設定をしたテキストレイヤーをあらかじめ用意しておき、それを複製してセリフを書くようにしましょう。
 
 ほとはーでは「もみ用(築地、ハオシャオ兼用)」「パプリカ用」「バジル用」の3つのレイヤーを用意して、それを複製して使い回しています。ほとはーはキャラ毎にフォントが違うため、これだけでかなりの省力化になります。
 ただし、この設定がすべてではありません。場合によってはボールドにしたりフォントのサイズを大きくしたり、フォントそのものを変えたりします。この設定はあくまで基本。場合場合によって変更しましょう。
 ちなみに、「!!」のようなビックリマークを入れる場合には、このビックリマークを選択してから、テキストパレットのメニューで「縦中横」を選ぶと横に並んでくれます。これも一種の設定変更に当たるでしょう。設定はその場その場で臨機応変に変えてください。
 
右上から左上  
■右上から左下へ
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 セリフは、まずテキストエリア(セリフを入れる枠)を移動し、そこにセリフを書き込み、その後、位置とサイズの微調整をする、という流れでひとつずつ入れていきます。ここではマウスとキーボードでの操作になります。
 セリフは、そのコマの中では右上と左下か、右上と左上に入れるように極力努力しましょう。大前提は「右から左」そして「上から下」です。「右下と左上」というのは、読めなくはないですがちょっと読みづらいです。
 
 当然、こういったことを決めるのはこの段階ではなく、コンテを切る段階で決めることです。ですが、慣れないうちはこの段階で試行錯誤して、コンテを切り直してもいいでしょう。
 特に、セリフが長くなりすぎたりすると、想像よりもフキダシのサイズが大きくなってしまい絵が描けないということがありがちなパターンとしてあるため、このあたりの勘を養うようにしてください。理想はコンテの段階で一発、です。
 
フキダシ用パスとアンカーポイントの整理  
■ペンツールで枠を描く
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 セリフを書いたら、今度はフキダシを描きます。
 ウェブ4コマはディスプレイ上で見るという特性上、フォントを小さくすることと字が潰れて見にくくなります。そのため、セリフを書いてからフキダシを描くことで、確実にフキダシの中にセリフが入るようにします。
 フキダシは専用のレイヤーに描きます。このレイヤーには4コマの外枠をちょっと細くしたものが描いてあります。このレイヤーにフキダシを描きます。
 
 まずフリーフォームペンツールを選択して、セリフを囲むようにフキダシの外枠を描きます(1)。ちょっとくらい歪んでも大丈夫です。また、この時にフキダシの「出っ張ってる部分」は描かないようにしてください。
 次にアンカーを整えます(2)。不必要なアンカーを削除し、ハンドルを動かして滑らかな曲線になるようにしてください(3)。ちなみに、フリーフォームペンツールのままでアンカーポイントをクリックすればそのアンカーポイントを削除できます。また、 Ctrl キーを押しながらクリックするとアンカーポイントを選択できます。
 
でっぱりを作る  
■でっぱりを描く
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 フキダシの線がきれいな曲線になったら、こんどは「でっぱり」を作ります。
 でっぱりを作りたい箇所に3つ連続でアンカーポイントを加えます(1)。フリーフォームペンツールのままでクリックすれば、アンカーポイントを加えられます。
 次に、中央のアンカーポイントを選択して、ひっぱります(2)。これが「でっぱり」になります。
 最後に、でっぱりのアンカーポイントのハンドルを動かして、でっぱりを鋭角にします(3)。こうすることででっぱりをカッコヨクします。
 
 この工程を全部のセリフにしてください。慣れればそれほど時間は掛からないでしょう。
 
範囲選択されてます  
■外枠を用意しておく理由
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 すべてのフキダシのパスが引けたら、「パス」パレットを開いてください。今描いたパスが「作業用パス」に追加されていると思います。これをダブルクリックしてちゃんとしたパスにしましょう。
 次に線を引きます。ツールプリセットから「ほとはー吹き出し」を選択します。これはほとはー専用の吹き出しを描くためのブラシです。一般的なマンガよりも太いので、皆さんは少し細くした方がいいと思います。
 このツールを選択してから、「パス」パレットの下にある「ブラシでパスの境界線を描く」をクリックしてください。これで吹き出しの線が描けました。
 
 次に白く塗り潰します。「自動選択ツール」を選び、吹き出しの中をクリックしてください。吹き出しの中が選択されるはずです。
 というのも、このレイヤーは4コマの枠が描いてあります。ここにフキダシを描くと、その中は閉じた領域になるということです。
 選択したら、アクションパレットから「選択範囲(3)塗り潰し」を選びます。このアクションは「選択範囲拡大(3ピクセル)」→「前面色で塗り潰し」→「範囲選択解除」をします。このアクションで白く塗り潰します。ちょっと雑な方法なので、線が汚くなるのが嫌な場合には工夫した方がいいかもしれません。
 
セリフ完成  
■さくっと終わらせましょう
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 以上を全部のセリフに行います。「選択範囲(3)塗り潰し」は着色時に何度となく行うアクションなので、必ず何かのキーに割り当てておきましょう。
 全部フキダシを描き終えたら完了です。この時点でのファイルを見てみてください。
 
サンプルB(セリフまで) 2.56MByte
 
 テキストレイヤーやパスはそのまま残っているので参考になると思います。
 このセリフとフキダシ描きは、慣れれば15分ほどで完了します。ただ、セリフや構図がまだ決まっていないとこの段階で時間が掛かると思います。そのあたりはコンテを切った段階である程度終わらせておきましょう。
 
 ちなみに、この時点でいいオチが思い付いたので最後のコマをちょっと変えています。こういうのはときどき「降りてきます」。
 
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[COLUMN] フォントにこだわる?
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 HTML と違い、4コマはグラフィックスです。そのため、クライアントの環境に関係なく、好きなフォントを使用できます。
 フォントは文章のです。フォントが違うと印象が大きく変わります。そのため、フォントにはこだわりたいところです。ですが、ウェブ4コマはウェブ4コマなりの制限があります。これらをまとめてみました。
 
・まずは潰さない
 本文でも書きましたが、ウェブはディスプレイ上で見るものです。そのため、字が小さすぎると潰れてしまいます。少なくとも、紙上のサイズは不可能です。見やすくするためにも、できる限り大きなサイズにしましょう。
 また、フォントによってはそれだけで潰れてしまうものもあります。特太角ゴシックやポップ書体はその典型で、ボールドにするとまったく読めなくなります。バジルのフォント(サンセリフ)も実はギリギリです。読めなければ意味がないので、気を付けてください。
 
・リアルは面倒
 同人誌とコミックス、セリフを読むと「違う」と感じると思います。これは、フォントが違うからです。
 印刷物の文章――コミックスや、雑誌、小説等――は、仮名は明朝漢字はゴシックになっています。つまり、ひとつの文章の中にふたつのフォントが使われているのです。
 ということは、セリフのフォントを「自然に」見せるためには、仮名と漢字を別フォントにする必要があるわけですが……面倒です。よっぽどこだわらない限りやめた方がいいでしょう。
 
・1キャラ1フォント
 上記の「混植」はあこがれであると同時に、制約でもあります。つまり、ウェブ4コマではその制約にとらわれないということです。
 印刷物では面倒な複数フォントのまぜこぜも、ウェブ4コマなら可能な限り好きにできます。ほとはーのようにキャラ毎にフォントを変えることで「声の雰囲気」を伝えることができるため、キャラを印象づけたい場合には積極的にしてみましょう。
 
・好き嫌い
 これは僕だけかもしれませんが……フォントの好き嫌いには気を付けましょう。
 僕は中丸ゴシック系がすごく好きで、どのくらい好きかというと、ゲームのフォントを自由に選べる場合には必ず中丸ゴシックにするくらい好きです。普通の人は小説っぽくするために明朝にすると思うのですが……。
 ほとはーの基本フォントがDFP中丸ゴシックなのもそのためです。でもホントはいけないことです。一般的な観点は大事にしましょう。
 
 フォントは声を代弁するものであり、時には絵よりも目立つものです。制限を踏まえて、こだわれるだけこだわってみましょう。
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