[COLUMN] 手よりも目
主線は、マンガの技術がもろに出ます。
たとえば「右向きは描きやすいけど左向きや正面は描きづらい」といったありがちな問題もあると思います。が、「2.コンテ」で説明したように、セリフや画面構成の制約には揺るがないものがあります。「描けない構図・アングルがある」ということが原因でそれらが犠牲になってはいけません。
僕も技術的にはまだまだのまだまだですが、それでも4コマで迷わず描けるレベルにはなりました。そのうえで、重要なのは
目だと思います。
・目は立体物を見るためにある
目は平面を捉えるよりも、立体物を把握することを目的としています。
目、そしてそれをコントロールする脳は、対象物を立体的に捉え、形や距離を把握します。平面的にとらえるわけではありません。
僕は特にそうだったのですが、絵を描くと、視点からは見えないものまで描いてしまう傾向がありました。立体的に把握してしまっため、本来見えないものを観てしまうわけです。
こういった傾向を克服する手段のひとつは、
写真です。デジカメなどで対象物を写して、それを元に絵を描いてみましょう。そして今度は、まるで「写真を撮るかのように」頭の中でイメージを固定してみましょう。そのイメージには、見えないはずの裏面は写っていません。このイメージを、絵に描くようにしてみましょう。
・目をカメラに見立てる
話が続きますが、自分の視点を「
カメラ」と考えて絵を描いてみましょう。
目は、ズームが自然に効き、ありとあらゆる範囲を視界として捉えます。そのため、目で観た物をイメージして描くと、視点やズームがぼやけます。つまり、絵が「どの点で」「どの方向で」「どの倍率で」描くのかを固定しづらいです。
そこで、カメラをイメージしましょう。カメラは、ズームは手動ですし、視線も一方向です。取った映像は四角い枠に収まります。その枠を想像して絵を描いてみましょう。
これも、実際に写真を撮ってみるのが上達の道かもしれません。たとえば、「
物に近寄って写す」のと「
遠くからズームで迫って写す」のとでは全く異なりますが、それを写真として比較すると違いが良くわかる思います。マンガは平面の絵ですから、写真を参考にすることで「絵作り」がしやすくなると思います。
・目は左右で違う
気付きにくいことですが、
左右の目のスペックは異なります。
左右の目で視力が異なったり、視点がずれていたりすることで、見え方は変わります。これらの差は脳内で差異が消されるため、立体物を観る場合には問題ありません。ですが、絵のような平面物を視る際にはこの影響が出てきます。正面の顔を描いても、右目と左目で大きさが違ったりします。
また、目には腕と同じように「
利き目」があります。物を視る時には利き目を基本として見るため、利き目に近い絵の方がよく見えることになります。
こういった影響は基本的にキャンセルできませんが、自覚することである程度抵抗できます。
自覚するための方法はいくつかあります。まず描いた絵を左右反転させ、元の絵と重ねてみること。同じ大きさと思って描いたのに左右のバランスが異なる場合には、片方がもう片方よりも大きく見えていたりする可能性があります。
また、寸法を正確に測って左右同じ大きさの目を描いてみるのもいいでしょう。それでどちらかの目の方が大きく感じる、ということもあります。
それと、紙に対しては必ず正面から向きましょう。斜めから見るように描いている場合、「見やすい方向」から視ている可能性があります。絵は正面から見るものですから、描く時にも正面から見ましょう。
・よく見すぎない
絵を描いていると、無性になんか変と思えることがあります。が、それは
気の迷いです。
絵をよく見すぎると、構成物が変に見えることがあります。たとえば「人間の鼻って変だなぁ」とか。逆に「マンガの鼻って変だなぁ」と思うこともあります。
人間は、物を見る時に「そのもの」を見るわけではなく、記号的に視ます。顔であればその顔の特徴となるポイントを見て、そのキャラが誰なのかを判断します。
ところが、自分で描いた絵をじーっと見ると、そういった「記号的見方」ができなくなり、とたんに絵が変になります。こうなるとまずいので、気を抜きましょう。
また、この「見るポイント」は重要です。読者は、マンガを見る時に「そのすべて」を見るわけではなく、ポイントとなる箇所を見ます。絵を描く際には、その「ポイント」を押さえるようにしましょう。
と言っても、その「ポイント」は人それぞれなので一概には言えません。まずは、「
自分のポイント」を把握しましょう。自分は何をポイントにしているのか……それが判れば、自ずと自分の描きたい絵が見つかるでしょう。
絵を描く上での、テクニックとは別の視点で解説してみました。これがわかったからといってさくっと絵がうまくなるわけではありませんが、こういうことに気付いているのと気付いてないのとでは大きいと思うので、頭の隅にとどめつつ絵を練習してみてください。