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風雅、舞い - 第三章 きもち (7)
 タマネギの形をした空間。出口のない閉鎖された空間。白い壁で包まれた空間。天井に埋め込まれた照明が影を作り出さない空間。直径100メートルはある巨大な空間。
 見上げるほど高い天井から、窓が張り出している。その中には何人かの男女が機械を前に作業をしていた。その内のひとり、白衣を着た女性の声がマイクを通してドーム型の空間へと出力される。
<これから第四十五回模擬対戦を行います。リシュネ他二名投下お願いします>
 出窓の脇にふたつの穴が空き、そこからステップに乗ってリシュネと少年が降りてくる。半分ほど降りたところでリシュネはステップから飛び降り、きれいに一回転してから、ほんの少し減速して、着地した。
<リシュネ!>
「準備運動よ」
 リシュネはそう言って、体を動かす。黒いスイムウェアのようなボディスーツの上から、無駄のない筋肉の着き方が判る。少年と同じく子供だが、冷めた表情と奥突の多い体がリシュネを大人びて見せていた。
 灰色のボディスーツを着た少年は、ステップが降りきるのを待ってから、床へと降りた。リシュネの三メートルほど後ろで、すました表情を見せていた。
<いいわね、リシュネがメインよ。君はあくまでサポート>
「解ってますよ」
 少年は苦笑いを見せながら、リシュネの背中を見た。少年よりバージョンは低くても、その外見から受ける印象は、リシュネの方が頼もしい。その状況を、少年は不思議な気持ちで受け止めていた。
<では、ディルト投下してください>
 リシュネ達が出てきた出口と窓を挟んで反対側が開く。一瞬の間の後、何かが落ちていった。
 それは、減速することなく灰色い床へと着地した。弾性の全くない壁が鈍い音を響かせた。
 顔を覆い隠す金色の長髪から、瞳が覗く。白いボディスーツからは骨格がそのまま浮き出て見える。ディルトという男の顔は、顎が長く尖っていて、鼻が高い。目は見開かれ、常に何かを口走っている。頬はこけ、細長い四肢が機械のように伸びていた。
<ふたりとも、いいわね?>
 リシュネはリラックスした笑みで、ディルトは口を裂けそうなほど横に開いた笑みで答えた。
<では、始め!>
「神の加護は我の元にあり」
 ディルトはそうつぶやき、両腕を大きく振りかぶった。交差された両腕から放たれた強烈な風がリシュネに向かって飛んでいく。リシュネは驚きつつ、それを見てから反応し両腕を交差した。
「! リシュネ!」
 風の刃はリシュネを突き抜けていった。少年は叫びつつ、冷静にそれを弾き飛ばした。
「大丈夫」
 リシュネはそう答えるが、一瞬後にボディースーツの至る所が大きく裂け、その中の白い肌にも綺麗な線が現れる。そして、そこから血が流れ出す。
 ディルトが第二撃を放とうとしているのを見て、リシュネは両手を突き出して構えた。
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