一応、謝れたんだよね……舞はそう自分を言い聞かせながらも、何か、もやもやとしたものを感じていた。
舞は自転車を家に止めてから駅の近くの商店街を歩いていた。何か散歩したい気分。でも、人のいない公園とかではなく、人のいる場所の方が落ち着けるような気がした。
公園、偽りの自然。木々、岩、川に囲まれた故郷、その混沌とした世界こそが、舞にとっての自然。泉のあった原風景に、雑踏が似ているのかもしれない。
ぱーっとしたい気分だった。でも、後ろめたさが、人との接触を拒んでいた。なんとか、雅樹に会うことができた……本当にできたんだろうか。
木村君達……会っても、何を言えばいいのだろう。多分、ごく普通に会えて、ごく普通に話して、また、いつものように戻れる。そう想像はできる。けど……。
会ったらどうしよう、そう思う反面……会いたいな、顔を見たいな、そうも思う。そんな他力本願な思いが、舞をてくてくと歩かせていた。
「舞さん……」
「……え?」
その声が、舞の意識を取り戻した。焦点が合った先に、俊雄が立っていた。
「木村……君?」
夢のような気持ちだった。かといって、うれしいというわけでもない。実体のない、ふわふわとした気持ちだった。
「ごめんね」
その声も、舞自信、誰が言ったのだろうと感じていた。
「……何が?」
「この前のこと」
「あれくらい、大丈夫だよ。それに……」
それに?
「舞さんの方が、大変だから」
舞の瞳に、光が点った。
「決めたんだ、僕、舞さんの力になりたい」
「助けてくれるって……こと?」
俊雄は、笑顔でうなずいた。
「っ……」
一瞬、舞の口から、決して自分では聞きたくない言葉が、出かけた。それを無理矢理飲み込んで、喉の奥から、違う言葉を絞り出した。
「ありがとう、でも……」
「とりあえず」
その俊雄の表情は、少し照れながらも、屈託がなかった。舞は、その笑顔に取り込まれて、その次の言葉を待ちたいと思った。
舞は待った。が、舞にとっての長い長い間、俊雄は言葉を発することもなく、少しうつむき加減だった。だから、舞はせかした。
「とりあえず?」
「……とりあえず、映画見に行こうよ」
いちばん、予想していない言葉だった。そのうれしさも、予想できなかった。
舞は自転車を家に止めてから駅の近くの商店街を歩いていた。何か散歩したい気分。でも、人のいない公園とかではなく、人のいる場所の方が落ち着けるような気がした。
公園、偽りの自然。木々、岩、川に囲まれた故郷、その混沌とした世界こそが、舞にとっての自然。泉のあった原風景に、雑踏が似ているのかもしれない。
ぱーっとしたい気分だった。でも、後ろめたさが、人との接触を拒んでいた。なんとか、雅樹に会うことができた……本当にできたんだろうか。
木村君達……会っても、何を言えばいいのだろう。多分、ごく普通に会えて、ごく普通に話して、また、いつものように戻れる。そう想像はできる。けど……。
会ったらどうしよう、そう思う反面……会いたいな、顔を見たいな、そうも思う。そんな他力本願な思いが、舞をてくてくと歩かせていた。
「舞さん……」
「……え?」
その声が、舞の意識を取り戻した。焦点が合った先に、俊雄が立っていた。
「木村……君?」
夢のような気持ちだった。かといって、うれしいというわけでもない。実体のない、ふわふわとした気持ちだった。
「ごめんね」
その声も、舞自信、誰が言ったのだろうと感じていた。
「……何が?」
「この前のこと」
「あれくらい、大丈夫だよ。それに……」
それに?
「舞さんの方が、大変だから」
舞の瞳に、光が点った。
「決めたんだ、僕、舞さんの力になりたい」
「助けてくれるって……こと?」
俊雄は、笑顔でうなずいた。
「っ……」
一瞬、舞の口から、決して自分では聞きたくない言葉が、出かけた。それを無理矢理飲み込んで、喉の奥から、違う言葉を絞り出した。
「ありがとう、でも……」
「とりあえず」
その俊雄の表情は、少し照れながらも、屈託がなかった。舞は、その笑顔に取り込まれて、その次の言葉を待ちたいと思った。
舞は待った。が、舞にとっての長い長い間、俊雄は言葉を発することもなく、少しうつむき加減だった。だから、舞はせかした。
「とりあえず?」
「……とりあえず、映画見に行こうよ」
いちばん、予想していない言葉だった。そのうれしさも、予想できなかった。