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風雅、舞い - 第五章 変化 (2)
「う〜、やっぱ病院ってのはやなもんだなぁ」
「はいはい、その言葉は聞き飽きた」
 真っ白な個室の中で、雅樹はベッドに横たわっていた。体中に包帯が巻かれていたが、表情は至って明るかった。
「そいや、もう退院だって言ってたな」
「そりゃそうでしょ、あんたみたいに迷惑な患者早く出したいんじゃない? ったく、大部屋追い出されちゃって」
「俺達は悪くないよなー、ただ話してただけだもん」
「それが問題なんだってば……」
 舞は困りながらも、雅樹の面倒が見られて正直うれしい気持ちだった。服などを部屋から持ってきたり、読みたい本を持ってきたり。ただ、料理くらいは少しやっておけばよかった、目の前できれいに切られたリンゴを食べる雅樹を見るとそう思う。
「でも、問題なく終わって良かったよね、お医者さんにもあまり訊かれなかったし」
「ファインダウト社とは関係の深い病院だから」
 洗濯物を持ってきたリシュネがすんなりと会話に入る。
「リシュネもここ一週間、ありがとうな」
「私は洋一の命令に従っただけ」
 素っ気ない答も、その働きぶりを見れば謙遜にしか聞こえなかった。
「舞もな。そいや、今日のテストはどうだったんだ?」
「大丈夫。別にここに来てるからって勉強おろそかにしてるわけじゃないし、木村君がちゃんと教えてくれてるから」
「穂香がじかに教えられればな〜。あいつ、昨日のテスト全部答えたぞ」
「えっ、じゃぁ……」
 舞がバッグからテストの問題用紙を取り出す間に、リシュネは訊ねる。
「……本当に、そこに<柊 穂香>って人がいるんですか?」
「ああ。結構いろんな人に会ってっけど、まだ穂香が見えたヤツっていないから、気にしなくていいよ」
「そうなんですか……」
 舞がテストを探し、リシュネが何かを考えているという会話の空白では、雅樹は空間と話し、穂香と会話の花を咲かせる。
「ね、これなんだけど……」
「どうだ?」
 雅樹は空間へと向き、その視線に会わせて舞も顔を向ける。雅樹は聞き取り、うなずき、そして舞に伝える。舞の顔は次第に青ざめていった。
「も、もういい……」
「穂香が、自分の答が間違ってるかもしれないからってあわててフォローしてるぜ」
 雅樹はそう笑いながら言う。ふと、見つめるリシュネに気付いて振り向く。
「その……穂香のこと、詳しく教えてくれませんか?」
 雅樹と舞は顔をニヤリとさせて、言った。
「交換条件、だな」
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