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風雅、舞い - 第七章 告白 (2)
「リシュネが碧き泉に来てるって」
「え、ホント!?」
 鈍行の電車の中で舞は驚いていた。
「悪いことしちゃった。まさか昨日の今日で来ると思わなかったし」
「よっぽど好かれてるんだな、お前」
「好かれてるって……」
 雅樹にとって、リシュネはかなり小さな子供に見えているようだった。
「ねぇ、穂香さんに頼んでリシュネに連絡取ることって……できないんだよね」
「ああ。まだ俺以外で穂香の声を聞けたって人には遭ってないな」
 流れる風景を眺めながら、独り言のように雅樹は言った。
 それを追うように舞も外を見る。見えないリシュネの姿を思い浮かべて。
「あ、でもリシュネ、先回りしちゃうかな」
「それはないと思う。俺、結白さんには朱き泉の場所言ってないはずだ」
「え、そうなの?」
 雅樹と母とは完全な情報交換ができていると舞は感じていたから、その言葉には驚いた。
「だって、雅樹は碧き泉の場所って知ってたんでしょ?」
「いや、実は偶然」
「マジ?」
「もちろんあの森の中で見つけるなんて不可能だけどな。ふもとに来た時に穂香が見つけてくれたから来れたけど」
「あのときの話?」
「ああ。だから、俺の朱き泉でも碧き泉の場所は知られてなかった、というよりは、俺のいた所が朱き泉って呼ばれてることすら知られてなかった」
「つまり、4つの泉があるっていうのも」
「結白さんから聞いて初めて知った。っつーか……」
 雅樹はため息をついた。
「他の泉、もうないかもな」
「えっ……それどういうこと??」
「おまえんとこの碧き泉、お前か兄さんが継がなきゃ途絶えるだろ?」
「継がないって事はないと思うけど」
「じゃあ2人とも死んだら?」
「あ……」
 ここ数ヶ月で頻発している戦闘。あり得ないことじゃない。
「病気だって戦争だっていいし、それに……単純に継ぐのが面倒になったってこともあり得るだろう」
「そうやって、泉を誰も管理しなくなる……」
 無人の泉。足の踏み場もないほど草が生い茂る碧き泉を、舞は容易く想像できた。そしてそれは、十分可能性のあることだった。
「そっか……玄き泉や白き泉がもうないかもしれないんだ」
「ま、誰もいなくたって、見つけ出せさえすればなんとかなるかも、な」
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