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風雅、舞い - 第九章 四人 (28)
「速い……」
 朱き泉で両腕を広げて、目を閉じている。体に伝わってくる、森全体の気配。異物が、森の外へと向かっている。
 森の大きさに比べて、その移動速度は速い。そして、遅くなることもない。
「何者かの」
 赤葉の問いにほんの少しためらってから、答える。
「AP、っていう人たちがいるんです」
「えーぴぃ?」
「英語で、進化した人っていう意味なんですけど、私達とは違う形で、特殊な力を使うことができる人達がいるんです」
「それとは違うのだろう」
「えっ? ……なんでです?」
「敵を表現するのであれば、そんな声は出んよ」
「あ……」
 そのとき、舞はリシュネのことを思い描いていた。
「……たぶん、APと同じ技術で作られたんだと思います。力は格段に弱いようですけど」
「作れる、か。次にここが襲われる時には、大群かもしれんな」
 赤葉はそういいつつも、それはないだろうという顔をしていた。
 だが、舞は深刻な顔をしている。
「……おまえ達を追ってきたわけではあるまい。ここは朱き泉、拠点となるべき場所じゃ。むしろ、大群に襲われても、揺るがない地である必要があろう」
「私」
 赤葉は舞の手を取った。
「お主の言う通り、今がそのときかもしれん。ならこの手の全て、託してもよかろう」
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