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風雅、舞い - 第十章 剣と魔法 (2)
「……」
 ため息混じりに黙り込んで、木に寄りかかる。そして雅樹をいじけるように睨む。
「……その理由は?」
「舞はな、相手の出方を見過ぎるんだ」
 雅樹も剣を地面に刺し、木に寄りかかる。
「正しく言うとだな、おまえは遠距離戦の感覚で近距離戦をしている」
「そんなこと」
「してないっていうんなら、それは近距離戦を甘く見過ぎているんだ。反射神経、判断の速さ、そういったもんが遠距離戦の域を出ていない」
「つまり、もっと速くしろ、ってこと?」
「できるか?」
「……」
 舞の顔は、悔しそうに『ちょっと無理』と語っていた。
「遠距離戦は敵の攻撃が自分に届くまで時間がある。舞はそれを見て、判断して、それを上回る力でねじ伏せたり、躱してさらに速い攻撃を返すことができる。だが接近戦は別だ。少ない情報でとっさに判断する必要がある」
「でも、失敗したら斬られるんじゃない」
「だから安全策を取る。情報が多ければ確実な攻撃を行う」
「情報量に応じて行動しろってこと?」
「そういうことだ。俺が踏み込んだら同時に下がる、くらいでいい」
「……」
 舞が不意に踏み込む。雅樹が刀を斜めに構える。
「……雅樹は下がらないじゃない」
「あのなぁ……」
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