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風雅、舞い - 第十章 剣と魔法 (22)
「もう、ホントにこんなになるまで!」
 ヘリの中、強い照明が舞を照らす。闇夜ではわからなかった、肌のひび。それを覆い隠すように、薬剤に浸けたガーゼを貼っていく。
「先生、ありがとう」
「えっ!?」
 滅多に見せない笑顔を見て、智子は驚いていた。
「先生の、おかげだから」
「……私は、何も、何もしなかっただけなんだから」
 何もしなかった。
 横に座る洋一を智子は恐る恐る伺うが、怒るどころかむしろ喜んでいた。
「ヘリを出すって言ったのは君なんだから。何もしてなくなんて、ないよ」
 そう言ってから、リシュネの隣に座り直す。
「楽しかったか?」
 何も言わずに、頷いた。
「チクってきたのか?」
「はい」
 はっきりと声に出して答えた。
「で?」
「……9月に、来るって」
「妥当なところだな。でも9月か……先生役、やってもらえる?」
 上目遣いで智子を見る洋一。負い目もあるし、なによりその目で見られたら、嫌とは言えない。
「……まぁ、高校生なら教えられると思うけど……」
「私も教わりたい」
「うん、いいわよ」
 リシュネには、素直に答えられた。
「でもその前に治療ね」
「どのくらいかかる?」
 さっと上から下まで見て、ひびの入り具合を判断する。
「ちょっと中から診ないといけないから、少しかかるかも」
「はい」
 罰なのだから当然だし、このリスクを負うことは覚悟していた。
 半日もなかった、でも、それでも来て良かった、そう思った。
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