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風雅、舞い - 第十章 剣と魔法 (21)
 空を包む星々。澄んだ夜空を、リシュネは見上げていた。
 碧き泉、その月夜を、心に刻みつけるように。
「行くのか?」
 闇の中から現れる雅樹。その隣には、眠そうな舞。
「……ホントに行くんだ」
 リシュネの背には、来た時と同じバッグ。
「うん……本当は、12時間だから」
 24時間ではなく、12時間。村についてから、とうに過ぎている時間。
「……じゃあ、またねっ」
 満面の笑みを見せて、舞に背を向ける。
 その背中から、舞は抱きしめた。
「ま、舞……?」
「お願いだから……お願いだから、そんな笑顔、憶えないでよ……」
 舞の頬を涙が伝う。
「舞……」
 リシュネの顔。笑みはなく、辛く、でもそれは、乾いた大地に水を注ぐように、涙がこぼれていく。
 強く風が、舞った。
 頭上を強い光が照りつける。巨大なヘリが現れ、ホバリングしていた。
「……じゃ、またね」
 柔らかい笑みを見せてから、リシュネは地を蹴り空を蹴ってヘリのドアに張り付く。無理矢理中に入ると、ヘリは急いでその場を飛び去る。
「……9月、絶対に行くから!!!」
 聞こえるはずのない轟音の中で、舞は強く叫んだ。
 きっと聞こえると信じて。
「……満足、か?」
 その雅樹の言葉は、赤葉に掛けられたもの。
 赤葉は笑みを浮かべて頷いた。
「まだ、全て信じたわけではない。でも……」
 でも、信じたい、そう思った。
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