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風雅、舞い - 第十二章 超越する存在 (42)
「って、俊雄君なんで帰らないの!」
 ファインダウト社に戻ってからも俊雄は帰らず、舞達と同じ、ホテルのようなフロアに付いてきていた。
「今日は泊まるそうだ」
「本当に今日だけ?」
 洋一は目を避ける。
「……俊雄君、明日には帰りなさいよ!!」
 舞は乱暴にドアを閉める。
 その隣の隣の隣の部屋を開け、俊雄と洋一、智子が入る。
「何かあったら彼女に訊いてみるといいよ、なんでも教えてくれるから」
「えー!? 鳳夫妻の事もあるのに、また仕事を増やすんですかぁ!?」
「冗談だよ。彼女はAPが専門だからな」
「あの……」
 俊雄は、訊く。
「本当になりたいんなら、明日、ちゃんと検査するから」
「はい!」
「あれだけのものを見ても、意志は揺るがなかったんだな」
 洋一はにっこりと笑う。
「……僕はやっぱり、舞さんはここにいるべきじゃないと思ってます。でも」
 なぜか、顔を赤らめる。
「戦ってる舞さんは、かっこいいです。それに、みなさんも、かっこよかった」
「あんたねぇ」
「あ、いえ、そういうのだけじゃないんですけど……でも、僕は」
 一歩進んで。
「舞さんと同じ場所に立ちたい。舞さんと一緒にいたい。その気持ちは変わりません」
 そう、はっきりと言い切った。
「ひとつだけ」
 洋一は近付き、俊雄を壁に押し付けるようにして、訊く。
「君は、女の子と付き合うとしたら、万人から好かれている女性と、万人から嫌われている女性、どっちがいい?」
「もちろん、万人から好かれている人の方がいいと思います」
「俺は、万人から嫌われている方がいい」
「え……」
 俊雄は、言葉に詰まる。
「そして、結白舞は、万人から嫌われるかもしれない女だ。我々が敵と戦うということは、そうなる可能性を持つことだ」
「……」
 洋一は肩を叩く。
「でも遥は、俺が愛していればそれでいいと言ってくれる。話はそれだけだ」
 洋一が肩から手を離し、智子と何かを言い合いながら出て行くのを、その言葉を反芻し、理解できなくても繰り返し続けながら、ただ見ていた。
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