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風雅、舞い - 第十二章 超越する存在 (41)
「慰めの言葉じゃないが、遥は恐らく、この世界の誰よりも強い。だから負けたことそのものは気にするな」
「優しい言葉ですこと」
 舞の嫌味、それに応えるように洋一から笑みが消え、舞の笑みも消える。
「でも、来年2月20日に訪れる闇は、遥の3分の1くらいは強い」
「2月」
「20日?」
「闇……」
「少なくとも今の君達全員ではかなわないだろう」
「今より強くなれ、っていうことですか」
「それだけじゃねーだろ」
 雅樹は笑む。
「そんだけ、誰も知らないことを知ってるんだ。そろそろ、他の泉のこと、教えてくれるんだろ?」
 洋一も笑む。
「もうふたり、泉の洗礼を受けた者がいれば」
「確かに、それだけの戦力があれば……」
「加えて、もうふたり、APが誕生する」
「!!」
 少年の顔が明るくなる。
「だが、闇だけじゃなく、天地社も本格的に動き出す。そして恐らく」
 手に持つウィスキーグラスを、乾杯のように掲げる。
「戦争が、始まる」
「戦争……」
「君達は、恐らくうぬぼれていたはずだ。でも、世の中には上には上がいる。ましてや、数で攻めてくる相手や、得たいのしれない相手ではなおさら、敗北する可能性は高まる。自らの目的のため、希望のため――」
 洋一はフロアの中心へと進む。智子が、リシュネが、雅樹が、舞が、少年が、俊雄が、各々のグラスを持ち寄る。
「本気で、取り組んで欲しい」
 そしてグラスを合わせる。心地よい高音が鳴り響いた。
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