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風雅、舞い - 第十四章 混乱の我家 (7)
「ねー、始めに聞いておきたいんだけど、彼女って何者?」
 食堂の端でプリンアラモードから生クリームをすくう舞は、そのはす向かいに座るフィオを見ていた。
「フィオ・アッツェ。ロベルト・アッツェ研究員の娘」
「AP?」
「全然。……人間よ、普通の。ただ」
「ただ?」
 アイスティーをすすって、リシュネは続ける。
「いわゆる天才。一度聞いた話は絶対に忘れないって言ってた。日本語も、飛行機の中で学習用テープを聴いただけで使いこなせるようになったって」
「マジですか」
 へー、という顔でフィオを見る。最初は同じ欧米人の少女ということでリシュネとフィオを似た存在と見ていたが、よく見れば全然違うなぁと思うようになっていた。
「じゃ、この話はここまでにして」
 リシュネの機嫌をこれ以上損ねるわけにはいかなかった。
「左さんの部屋から出てきたけど、何かあったの?」
 リシュネはうなずく。
「天地生物科学工業で、私達を攻撃する準備をしている」
「攻撃の……準備」
 あの生物兵器を使う、リシュネ達が元いた組織。雅樹に対峙した銃を持つあの男の姿が目に浮かんだ。
「でも、今のファインダウト社はAPの研究に注力しすぎてる。こんなときに攻撃されたらひとたまりもない」
「それを指摘してきたんだ」
「そう。解ったうえで、断られた」
「それって勝てるってことなんじゃないの?」
 リシュネは首を振った。
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