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風雅、舞い - 第十四章 混乱の我家 (6)
「あーっ、やっとみつけたー!」
 肩を落として左の部屋から出てきたリシュネを舞は見つける。
「どうしたのいったい」
「……あ、えっとね……」
 その棘のある声音に、舞は戸惑う。
 あー、そういえば私何やってるんだろう、なんだかただ話し相手探してただけみたい……。
「ごめん、用事あった?」
「え……ない。でもあると言えばあるかも」
 と、リシュネは手を伸ばし、舞の手を取る。
「え?」
「話し相手になって」
 目の前の少女は、自分と同じことを思っていたようだった。
「……うん!」
 満面の笑みを浮かべて、舞はリシュネと奥へ向かう。
「ね、あたしも同席していい?」
 その声に向けて、リシュネは光の速さで睨み返した。
 視線の先、フィオはたじろく。
「ちょ……声掛けただけでガン飛ばすっていうのは反則だと思うんだけど」
 さすがにフィオも、APに正面切って刃向かうだけの度胸はなかった。父親の仕事の関係で、危険な橋を何度も渡ってきてはいたが、「相手が人なら何とかなる」という経験則も、今この場では活用できなかった。
「ついてこないで。行こ、舞」
「う、うん」
 舞は複雑な気持ちでフィオを目の端に捉えていた。フィオを自分よりも毛嫌いするリシュネの姿にも驚いていたし、俊雄のことも含めてフィオと話してみたいとは思っていた。ただ、俊雄をAP化しようとしたことを許す気にはなれない。
 そんな後ろ髪を引かれる気分で舞はリシュネにひきずられ、その数メートル後ろを、ゆっくりとフィオは付いていった。
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