その発言に全く意味が無いことを知っていても、リシュネは言わずにはいられなかった。
「天地社を攻撃させてください」
体を乗り出して、机の向こう側に座る左へと訴える。
「だめだ」
当然の回答が返ってきた。
「……敵は今、準備を整えてる。恐らく1ヶ月も経たない内に、ここへ攻撃を仕掛けてくる」
左という男は、リシュネの発言が、全く意味のない内容だということをよく知っていながら、何度もうなずいてリシュネの言葉を聞く。
「でもここは最悪の状態。彼の両親やトシオのこと、新しく参加したスタッフ達が原因で混乱しきっている。今攻撃を受けたら何もかも失う」
それが、目の前の男の目的だと、リシュネは知っていた。だから、この発言が無意味だということもよく理解していた。
それでも、言いたかった。
「そんなの、嫌。だから、優先順位を変更して、攻撃態勢を整えて、天地社を攻撃させて」
「うーん、そうだなぁ」
左は少し考えてから、にっこり笑って、言う。
「失って困るものなんて、何一つないと思うんだけど」
「っ!」
解っていた。
左洋一という人間がこういう人間だということは、理解していた。
以前の自分は、その考えに共感していた。
だからこそ、尊敬もしたし、あこがれも抱いた。
なら、変わったのは私だ。裏切ったのも私だ。
自分の方が正しいとはっきり言える、でも、その正論は、左に対する自責の念を解決してはくれない。
「リシュネ」
左はいつの間にか立ち上がり、リシュネの頭を撫でた。
「立派な人間に育ったな」
左が部屋を出るまで、リシュネは、その言葉を反芻した。
「天地社を攻撃させてください」
体を乗り出して、机の向こう側に座る左へと訴える。
「だめだ」
当然の回答が返ってきた。
「……敵は今、準備を整えてる。恐らく1ヶ月も経たない内に、ここへ攻撃を仕掛けてくる」
左という男は、リシュネの発言が、全く意味のない内容だということをよく知っていながら、何度もうなずいてリシュネの言葉を聞く。
「でもここは最悪の状態。彼の両親やトシオのこと、新しく参加したスタッフ達が原因で混乱しきっている。今攻撃を受けたら何もかも失う」
それが、目の前の男の目的だと、リシュネは知っていた。だから、この発言が無意味だということもよく理解していた。
それでも、言いたかった。
「そんなの、嫌。だから、優先順位を変更して、攻撃態勢を整えて、天地社を攻撃させて」
「うーん、そうだなぁ」
左は少し考えてから、にっこり笑って、言う。
「失って困るものなんて、何一つないと思うんだけど」
「っ!」
解っていた。
左洋一という人間がこういう人間だということは、理解していた。
以前の自分は、その考えに共感していた。
だからこそ、尊敬もしたし、あこがれも抱いた。
なら、変わったのは私だ。裏切ったのも私だ。
自分の方が正しいとはっきり言える、でも、その正論は、左に対する自責の念を解決してはくれない。
「リシュネ」
左はいつの間にか立ち上がり、リシュネの頭を撫でた。
「立派な人間に育ったな」
左が部屋を出るまで、リシュネは、その言葉を反芻した。