「結果は上々だったよ、あいつらの微妙な笑みを見せてやりたかったな」
石和は笑う。車は首都高に乗った所だった。
『それは本当に上々なのですか』
「通していいのか、でも金になる、そんな顔だったぞ」
『偽善的な表情というわけですね』
青年が携帯越しに笑みを浮かべる。
「というわけで、ファインダウト社への攻撃、許可されそうだ」
『…………』
間。
「……?」
石和が声を掛けようとした瞬間。
『ひゃっほう!!』
「!」
聞いたことのない喜び方に、石和は面を食らった。
「はは……よっぽど嬉しかったんだね」
『ええ、ええ……! これで、やっとあいつを殺せるんです!』
みし、という携帯の悲鳴が聞こえてくる。
『やっと左を殺せる、殺せる――ああどうやって痛めつけよう、どういう激痛を与えよう、腹に突き立ててやろうか、横に割いて中の物を見せつけてやろう、スライスにして口に詰め込んで――』
「…………」
その発言は耳に耐えられるものではなく、かといって切るわけにもいかず、石和は携帯を離す。
ふと、自分は何をしているのだろうと思う。
ただの背広組だった。妻子だっている。こんな血生臭い場所にいていいはずがない。道は、大きく外れていた。
いや。
道はけして外れていない。俺はずっとこう生きてきたのだから。
人は、自分の意志で生きるのではない。どんなものにでも役割というものがある。与えられた立ち位置で、与えられた台本を元に、与えられた役割をこなせばいい。
そこに、善悪は存在しないのだから。
石和は笑う。車は首都高に乗った所だった。
『それは本当に上々なのですか』
「通していいのか、でも金になる、そんな顔だったぞ」
『偽善的な表情というわけですね』
青年が携帯越しに笑みを浮かべる。
「というわけで、ファインダウト社への攻撃、許可されそうだ」
『…………』
間。
「……?」
石和が声を掛けようとした瞬間。
『ひゃっほう!!』
「!」
聞いたことのない喜び方に、石和は面を食らった。
「はは……よっぽど嬉しかったんだね」
『ええ、ええ……! これで、やっとあいつを殺せるんです!』
みし、という携帯の悲鳴が聞こえてくる。
『やっと左を殺せる、殺せる――ああどうやって痛めつけよう、どういう激痛を与えよう、腹に突き立ててやろうか、横に割いて中の物を見せつけてやろう、スライスにして口に詰め込んで――』
「…………」
その発言は耳に耐えられるものではなく、かといって切るわけにもいかず、石和は携帯を離す。
ふと、自分は何をしているのだろうと思う。
ただの背広組だった。妻子だっている。こんな血生臭い場所にいていいはずがない。道は、大きく外れていた。
いや。
道はけして外れていない。俺はずっとこう生きてきたのだから。
人は、自分の意志で生きるのではない。どんなものにでも役割というものがある。与えられた立ち位置で、与えられた台本を元に、与えられた役割をこなせばいい。
そこに、善悪は存在しないのだから。