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風雅、舞い - 第十五章 濁る澱み、清らかな血溜り (2)
「あのー……もっといい車、なかったんですか?」
 4トントラックの荷台で、舞は運転をする智子に訊く。
 ファインダウト社を出てからすでに4時間。サービスエリア以外はずっと居心地の悪い助手席に座りっぱなしで、ついてきたことを少なからず後悔していた。
「方法はいくらでもあるけど、できるだけ早く、っていう条件だとこれしかなかったのよ。彼を連れていくにはメンテナンスできる環境が必要だし、運転手も他の車も用意できなかったし」
「で、このトラックだけが用意できて、先生は運転できた、と」
「あれ、言ってなかったっけ」
 智子はにっこりと笑う。
「大型の免許は持ってないけど」
「! 嘘ですよね、冗談ですよね」
「残念ながら本当よ」
「……法律違反ですよ?」
「何今さらいってるの。ファインダウト社は、カテゴライズすれば反政府組織の内に入るんだから、そんなこと気にしちゃだめよ」
「検問があったらどうするんですか」
「それこそあなたの出番じゃない」
「……」
 改めて、非常識な世界にいるのだということを痛感した。
 ま、そんなこと言ったら私の能力も否定することになっちゃうけど。
「そろそろ時間かしら」
「はい、見てみます」
 席の間に置いてあるノートパソコンを取り出す。スリープ状態から戻すと、画面には棒グラフと数値が並んでいる。それを舞は読み上げる。
「上から138、115、63……」
 読み上げられる数値を聞いて、智子はうなずいていた。
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