神妙な面持ちで、彼はその景色を視ていた。
城の中で2番目に高い部屋のテラスから、眼下の城下町を視る。懐かしい記憶も、忘れ去りたい甘酸っぱい想い出も、血の臭いも、ありのままに蘇る。数年前の痕、えぐれた地面や崩壊した建物はまだ残っているが、むしろその時よりも市場の面積は広くなっていた。遠く離れたテラスまで市場の喧噪が聞こえるほどの活況に、自然と笑みがこぼれた。
「シーバリウ様」
後ろを振り向くと、テラスへと出て来た少女の悲痛な面持ちが目に飛び込んでくる。
「ウムリル……」
「……ここだと、思いました」
「ここは……向こうに行く前に一度来ておきたかったからね」
ウムリルへと向き直り、テラスの柵の側に置かれた鉢植えを見る。ウムリルが育ててきた花を。
視界に、ウムリルの泣き顔が飛び込んでくる。抱きつくウムリルを、シーバリウは優しく包む。
「たった3ヶ月間だから、心配しないで」
「そんなの無理です」
「そうか……」
「……いない間、じいやとわたくしとでちゃんと留守番していますから」
「……ありがとう」
シーバリウが強く抱きしめると、
「う”……」
ウムリルはただただ泣きじゃくった。
城の中で2番目に高い部屋のテラスから、眼下の城下町を視る。懐かしい記憶も、忘れ去りたい甘酸っぱい想い出も、血の臭いも、ありのままに蘇る。数年前の痕、えぐれた地面や崩壊した建物はまだ残っているが、むしろその時よりも市場の面積は広くなっていた。遠く離れたテラスまで市場の喧噪が聞こえるほどの活況に、自然と笑みがこぼれた。
「シーバリウ様」
後ろを振り向くと、テラスへと出て来た少女の悲痛な面持ちが目に飛び込んでくる。
「ウムリル……」
「……ここだと、思いました」
「ここは……向こうに行く前に一度来ておきたかったからね」
ウムリルへと向き直り、テラスの柵の側に置かれた鉢植えを見る。ウムリルが育ててきた花を。
視界に、ウムリルの泣き顔が飛び込んでくる。抱きつくウムリルを、シーバリウは優しく包む。
「たった3ヶ月間だから、心配しないで」
「そんなの無理です」
「そうか……」
「……いない間、じいやとわたくしとでちゃんと留守番していますから」
「……ありがとう」
シーバリウが強く抱きしめると、
「う”……」
ウムリルはただただ泣きじゃくった。