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Machician - 第2話 好きとスキと (2)
 5分後。
 階段を降りると目の前に玄関、その右に食堂への入口。
 広々とした食堂にはテーブルが5つ。テーブルのひとつに登山家だろうか、体格のいい男性二人が朝食を取っている。
「おはようございます」
「お、おはよう!」
「おはよう」
 丁寧にお辞儀をするシーバリウに男二人も応える。
「どうぞ、お好きな席にお座りください」
 はこねに勧められてベランダ側の席に座る。食堂の片側は全面ガラス張り、そのままベランダに続いている。ベランダにもテーブルが3つ置かれていて、朝方の寒い時間帯でなければそこでの食事も良さそうだった。ちなみにベランダの向こうには森、下には川が流れていて。
「風流ですよね〜」
「和食と洋食、どちらになさいます?」
 差し出されたメニューに和食と洋食のメニューが書かれている。和食は焼き魚、洋食はオムレツが主菜になっていた。
「和食をお願いします」
「納豆は大丈夫ですか?」
「挑戦してみます」
「はい、がんばってください♪」
 ぱたぱたとはこねが戻っていく。奥の厨房でうめのパパ、が立ち上がり調理を始める。昨日会った時とは雰囲気が違う。仕事をしている男の顔。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます。……ッ!!!」
 瞳孔が開く。何気なく飲んだその温かいこげ茶色の飲み物は得体の知れない味だった。
「これはまた……不思議な味ですね」
「ほうじ茶です」
「ほ、ウジ、茶?」
「変なところで切らないでください。お水もお持ちしますね」
「はい……」
 ぱたぱたと戻っていくはこね
 二口目をつけようと努力している間に、はこねが長方形のお盆を持ってくる。
「はい、おまちどおさま」
 鮎の塩焼き、納豆、ご飯、佃煮、お新香、味噌汁。ほんの5分前まではどんなものでも食べられる気でいたのが、今はどれも食べ物にすら見えない。
 が。
 昨晩、疲れていたのか何も食べずにすぐ寝てしまったシーバリウ、空腹が自然と箸を伸ばさせ、鮎の塩焼きを取り口にする。
「あ……」
 知った味に、幸せな顔が満ち溢れた。
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