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Machician - 第4話 機械の魔法、機械の天使 (25)
「目標の待逢神社が見えました」
 18式セラフのガナーシートに座る姫山巡査が右下方に見える神社を視認する。姫山巡査の網膜に直接映し出される光景は、遮蔽物の全くない全方位映像。自分の体すら刷り込まれないその映像が、自分ひとり宙に浮いているかのような錯覚に陥らせる。
 その眼下には待逢神社を中心とした山々が広がっており、赤色の方眼線が地面にマッピングされている。待逢神社には10人ほどの人、拠点となっているテント、木材やパイプといった建材が見える。
 姫山巡査は左手のスライダを傾け、カーソルを移動させる。待逢神社の境内、何も置かれていないその中央にカーソルを合わせて右パネルのキーを押すと、逆三角錐のアイコンがセットされる。
『マークセットしました』
「了解、それでは着地します」
 パイロットシートに座る林田巡査にも同じ映像が視えている。眼下に見える神社の敷地でくるくる回る逆三角錐を確認して、左のレバーを回し機体を回頭させ、右のレバーを下に押し下げ降下する。
林田巡査、敷地内に人がいますので接近警戒線と警告をします』
「ちょっと待ってください、着地点の上空に来てからお願いします」
『あ、そうですね、わかりました』
 林田巡査の視界に刷り込まれている姫山巡査の顔が苦笑いする。
 左のレバーを手前に捻って減速を掛け、右のレバーを捻り体を起こす。神社の庭、その上空で、両肩から生えた4機のスラスターが直立する人型の機械をホバリングさせる。
 それを確認してから姫山巡査が右パネルのキーを押し、接近警戒線を地面に投影する。楕円形に明滅する赤い線から離れていく人影。姫山巡査はもうひとつのキーも押して、外部スピーカーをオンにする。
『皆様、こちらは奥多摩署の者です。お祭りのお手伝いに参りました。これから着地しますので、地面に描かれた線から離れてください』
 赤いジャージを着た女性達が離れるのを確認してから再度アナウンスする。
『それでは、これより着地しますのでお気を付けください』
「了解しました、着地します」
 林田巡査が左のレバーを下に倒し、セラフが下降する。その巨体と重量からは想像も付かないほど静かに着地する。
『相変わらずお上手ですね』
「はは、これくらいしか取り柄がないですから。じゃあ降りましょうか」
『はい、乗降モードに移行します』
 そのままの姿勢で体を降ろしていき、足を折りたたんで「正座」するようにしゃがみ込む。
『ハッチ開きます』
 セラフの胴体が縦に開き、中からパイロットシートが滑り出し、それを追うようにガナーシートが降りてくる。そのパイロット二人は、宇宙服のようなスーツを着ていた。
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