KAB-studio > Machician > 第5話 待逢として (11)
Machician - 第5話 待逢として (11)
 祭の前日。
「と言っても、もうほとんど終わってますから」
 紙をめくって、スケジュールとTODOを確認する。
「あとは、今日の夕方に来るおみこしくらいだよね」
「それなのですが、オミコシというものは神社に必ずあるものではないのですか?」
「最近はないみたい。見たら判るけど、高そうだもの。いろんな神社で共有する方が安上がりなんじゃない?」
「そうなのですか、見るのが楽しみです」
「私は屋台が楽しみ! 来たら一緒に回ろうね!」
「あ……」
「いいよ、明日はおじさん達がやるから」
 休憩所に座る男達が許可を出し、シーバリウの顔が明るくなる。
「はい、それではお言葉に甘えて!」
「やったー!」
「二人きりだからってえっちなことすんじゃねーぞ!?」
「え”!?」
 どぎまぎする二人に笑い声が上がる。
「!……」
 シーバリウの顔が、ほんの少し、回りから気付かないほど微かに硬くなる。
うめさん、返事はせずに聞いてください』
「!?」
 うめシーバリウの方を向く。シーバリウは別の方を向いている。
『今、うめさんの心に直接話しかけてます。うめさんも心の中で答えてみてください』
『……聞こえる?』
『はい、聞こえます』
『すっごーい! 魔法ってこんなこともできるんだ。あ”、じゃあ毎晩携帯で話す必要ないじゃん』
『えっと……これって結構魔法力使いますし、それに、直接会えばいいのでは……』
『ママやパパに見つかったらやだもん……で』
 その声は真面目。
王子、何かあった?』
『はい。顔は向けないで、セラフの背中を見てください』
『背中……?……??』
 セラフの背中、6枚の羽の下に、ワースを着た人間が二人いる。
『なに、あれ……』
『警察の方です。私服警官の方があの方向を注視しています。おそらく強制解放するのでしょう』
『え? じゃあ』
うめさんは何くわぬ顔で家の中に入ってください。ジャージさん、聞こえました?』
『うん、聞こえてる』
 うめにもジャージの声が届く。その声は、緊張していた。
 検索