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Machician - 第5話 待逢として (20)
『離せ、離せッ!』
 装甲多脚の手の中で林田がもがく。が、さすがにその巨大な手から逃れる術はなかった。その腕をワースを着た警官達がよじ登り、林田に近づく。手には拘束具を持っている。
 一方、ふりかはうめ姫山巡査と一緒に歩いていく。
『この近くで機花が着陸できるスペースってあります?』
「こっちです」
『早く出たい……』
『もう少し我慢してね。今はそれ脱げないの』
「?」
『これだけ長時間、訓練を受けてない人が着てると体によくないから、専門の病院でちゃんとした手順で外す必要があるの』
「そんなに大変なんだ……」
 見た目には薄手の宇宙服に見えるワースも、「着る宇宙WEARTH」というのは本当のようだった。
『もう降ろしていいですよ』
 装甲多脚の腕から降りた警官達の指示で、ジャージ林田を地面に降ろす。肩と足にはめられた拘束具が動きを完全に抑え込んでいる。
 神主が前に立ち、林田が見上げる。
「しっかりと罰を受け、やり直すんだな」
『相変わらず、偽善を……これで林田の家も終わりだな』
「元々残す気はなかったんだろう?」
『まぁな。あいつはあんなやつだし』
 ようやく林田巡査が上がってくる。
『言っとくが、ほとんど資産は残ってないからな。代わりに負の遺産はたくさんある。あいつには荷が重すぎるものばかりだ。偽善者のお前なら放っといても手伝ってくれると思うがな』
「わかった、それは私が見よう」
『……だからお前は嫌いだ』
 そして、反対側を、装甲多脚の方へと振り向く。
「……私には、あなたがなぜそこまで魔法を嫌うのか、正直分からない。私には、魔法は科学と同じだもの」
『お前は、本当の魔法使いに会ったことがあるか?』
「本当の……純粋魔法の使い手?」
『さあ、そういう難しいことは知らないがな……この世界には、本当に未来を予知できる者、死者を蘇らせる者、そういった人智を超えた存在がいる。科学では到底辿り着けない場所に立つ者達がな』
調停委員会にそういう人がいるとは聞いたことあるけど……」
『契約を取り消すという客に頼んで、未来を予知する者に会った。起こる事象を一分刻みで列挙したファイルを3日分もらった』
「まさか」
『すべて合っていた。何もかも完全に一致していた。しかも、未来は変えられなかった。そのリストには、俺が未来を変えよう、こういう行動をしようと考える、ということまで書かれていた。リストには、変えようと努力する私の姿すべてが書かれていた』
「……」
『魔法は、お前が考えているようなおもちゃじゃない。負け犬の忠告として憶えておけ』
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