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Machician - 第6話 祭の夜に (9)
 夜遅く、旅館山田屋に静かに入っていく。
 家屋側ののれんをくぐり、居間に入ると、うめがダイニングテーブルで寝ていた。
うめさん、待ってくれてたんだ……」
 うめの手元にはメモ帳。
王子遅い!』
『なにやってんのよ!』
『ねむいー』
 そんな言葉と、うめの寝顔を見比べる。
 茶色がかったクセのある髪の奥に、うめの寝顔。普段の快活な表情はそこにはなく、一人の乙女がそこにいた。
うめさん、ただいま」
 頬を撫で、髪を上げながら、うめを起こす。
「………………………………王子? 帰ったの?」
「はい。遅れて申し訳ありません。うめさんも部屋で寝た方がいいですよ」
「うー……じゃあお姫様だっこで連れてって」
「はい」
「! うそうそ冗談!」
 がたと立ち上がって顔を赤らめる。立ちくらみのように頭を振って。
「……なんか混乱する……夢?」
「夢じゃありませんよ」
「……じゃあ寝る」
 と、つたない歩みで自分の部屋へと向かう。
 その寝ぼけ眼は、普段の笑顔とは違う、うめの弛んだ部分。
 そんな頼りない姿を見て、シーバリウは思う。
 かわいい、と。
 でもそれは。
 娘や妹を見るような「かわいい」に近いような気がする。
「じゃ、おやすみ王子
「はい、おやすみなさい」
「明日はみんなで楽しもーね」
 そう、明日、うめさんとのデートで決めなければならない。
 明日のデート、で……?
 「みんな」?
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