『わっしょい!』
『わっしょい!』
カメラで再生している映像が、紫恋の部屋に投影される。
これならうめも文句言わないよね。
自分の撮った映像を自画自賛しながら、上着を脱ぐ。午後5時にはまだ1時間近くあったが、着付けには時間が掛かるし、早めにうめに会って話を聞くのも悪くないと思っていた。
やっぱり、二人きりの方がいいだろうし……。
相変わらずの仲人役に苦笑いしながら、ブラウスのボタンを外す。
と。
「あ、やば……」
声に出して驚くほど、バツの悪い顔をする。
首には、シーバリウのネックレスが掛かっていた。
「返すの忘れてた……」
なんとか言い訳を考える。そういえばプールでもしていたっけ。あの時、こちらの世界では必要ないとかなんとか言ってたような……。
ま、大事なもんなら王子の方から言ってくるでしょ。
肌着を着て、その中にネックレスをしまう。
ベッドに掛けてあった茶色い浴衣に袖を通し、帯を締める。
浴衣の着付けは、晴れ着の着付けに比べれば簡単だった。
小さい頃学んだ、晴れ着や浴衣、巫女装束の着付け、それと破魔矢や絵馬、おみくじの販売方法。どれも母にねだって教えてもらったものだ。
私は、父に甘えていたし、父も私を甘やかしていた。甘やかしすぎて、神社の事はほとんど教えてくれなかった。どんなにねだっても駄目だった。高士を真似て合気道を教えてもらいたいとせがんでも、教えてはくれなかった。
母は、どちらかというと嫌いだ。母も同じように父に甘えていて、父も母を甘やかす。だから、母は本当の後継ぎなのに、神社のことは何も知らない。そんな甘えた姿が嫌いだった。そんな母に、母が知る数少ない知識を教えてもらうというのは、皮肉な気がした。
疎外感。
自分が大事にされていることは分かる。この神社の後継ぎとして生きる気はないし、だからこそ、束縛してこなかった両親の優しさも分かる。それでも、高士が父に鍛えられ、後継ぎとして成長していくのを見ると、自分はこの家の人間ではないのではないか、という錯覚さえ憶える。
……。
頭をぶんぶんと振って、嫌なイメージを振り払う。
何ネガティブな考え方してるんだろ……うん、うめがいいって言うんなら一緒に楽しく遊ぶのもいいかも。
きゅっと帯を締めて、紫恋は部屋を出て行った。
『わっしょい!』
カメラで再生している映像が、紫恋の部屋に投影される。
これならうめも文句言わないよね。
自分の撮った映像を自画自賛しながら、上着を脱ぐ。午後5時にはまだ1時間近くあったが、着付けには時間が掛かるし、早めにうめに会って話を聞くのも悪くないと思っていた。
やっぱり、二人きりの方がいいだろうし……。
相変わらずの仲人役に苦笑いしながら、ブラウスのボタンを外す。
と。
「あ、やば……」
声に出して驚くほど、バツの悪い顔をする。
首には、シーバリウのネックレスが掛かっていた。
「返すの忘れてた……」
なんとか言い訳を考える。そういえばプールでもしていたっけ。あの時、こちらの世界では必要ないとかなんとか言ってたような……。
ま、大事なもんなら王子の方から言ってくるでしょ。
肌着を着て、その中にネックレスをしまう。
ベッドに掛けてあった茶色い浴衣に袖を通し、帯を締める。
浴衣の着付けは、晴れ着の着付けに比べれば簡単だった。
小さい頃学んだ、晴れ着や浴衣、巫女装束の着付け、それと破魔矢や絵馬、おみくじの販売方法。どれも母にねだって教えてもらったものだ。
私は、父に甘えていたし、父も私を甘やかしていた。甘やかしすぎて、神社の事はほとんど教えてくれなかった。どんなにねだっても駄目だった。高士を真似て合気道を教えてもらいたいとせがんでも、教えてはくれなかった。
母は、どちらかというと嫌いだ。母も同じように父に甘えていて、父も母を甘やかす。だから、母は本当の後継ぎなのに、神社のことは何も知らない。そんな甘えた姿が嫌いだった。そんな母に、母が知る数少ない知識を教えてもらうというのは、皮肉な気がした。
疎外感。
自分が大事にされていることは分かる。この神社の後継ぎとして生きる気はないし、だからこそ、束縛してこなかった両親の優しさも分かる。それでも、高士が父に鍛えられ、後継ぎとして成長していくのを見ると、自分はこの家の人間ではないのではないか、という錯覚さえ憶える。
……。
頭をぶんぶんと振って、嫌なイメージを振り払う。
何ネガティブな考え方してるんだろ……うん、うめがいいって言うんなら一緒に楽しく遊ぶのもいいかも。
きゅっと帯を締めて、紫恋は部屋を出て行った。