「ど、どう? 変じゃない?」
ジャージがゆっくりと回る。「ジャージ」の由来だったジャージではなく、薄い藍色の浴衣。絵柄が少ない地味な生地が、いつもの小豆色とは正反対で全く異なる印象を与える。その背には、今日はちゃんととかしてある金色の長い髪がなびいていた。
「うん、悪くないんじゃない? でも……」
でも。
「ゴーグル取りなよ」
「それだけは絶対にだめ」
「もったいない。ゴーグル取ったら見る男全員がナンパしてくるんじゃない?」
「ゴーグル取ったら酷い顔かもよ?」
「顔がどうでも、男はやっぱスタイルでしょ」
「あら、紫恋ちゃんは顔もいいと思うけど」
「!!」
いきなり声を掛けられて紫恋は振り向く。そこには母、むらさき。
「私の話じゃなくて、ジャージさんの話」
「あら、本当、スタイルいいわねー。でも」
その目は笑ってない。
「胸は紫恋ちゃんの方が上ね」
「……母さん、何しに来たの」
「あ、そうそう、お小遣い」
「はぁ」
むらさきが紫恋に1万円を渡す。恥ずかしいと思いつつも、もらえるものは素直に受け取るのが紫恋の流儀だった。
「高士ちゃんは?」
「父さんと一緒なんじゃない? 私達と遊ばないで、父さんの手伝いするって」
「あらあら、朝あんなにがんばったんだから、遊んじゃえばいいのに」
「高士は遊ぶよりもそっちの方が楽しいんでしょ」
「しょうがないわねぇ、じゃああとで渡しておいてね」
紫恋にもう1万円を渡して、立ち去ろうとする。
と。
「?」
再び紫恋の方を向き直り、細い目で紫恋をじっと見る。その目は、真剣。
「……何?」
「…………………………」
その顔が笑みに変わり。
「ちょっとほつれてるみたい」
バッグからはさみを出して、襟元に出てる糸をちょんと切って。
「じゃ、お母さん忙しいから」
と、そそくさと立ち去っていった。
「…………?」
ジャージがゆっくりと回る。「ジャージ」の由来だったジャージではなく、薄い藍色の浴衣。絵柄が少ない地味な生地が、いつもの小豆色とは正反対で全く異なる印象を与える。その背には、今日はちゃんととかしてある金色の長い髪がなびいていた。
「うん、悪くないんじゃない? でも……」
でも。
「ゴーグル取りなよ」
「それだけは絶対にだめ」
「もったいない。ゴーグル取ったら見る男全員がナンパしてくるんじゃない?」
「ゴーグル取ったら酷い顔かもよ?」
「顔がどうでも、男はやっぱスタイルでしょ」
「あら、紫恋ちゃんは顔もいいと思うけど」
「!!」
いきなり声を掛けられて紫恋は振り向く。そこには母、むらさき。
「私の話じゃなくて、ジャージさんの話」
「あら、本当、スタイルいいわねー。でも」
その目は笑ってない。
「胸は紫恋ちゃんの方が上ね」
「……母さん、何しに来たの」
「あ、そうそう、お小遣い」
「はぁ」
むらさきが紫恋に1万円を渡す。恥ずかしいと思いつつも、もらえるものは素直に受け取るのが紫恋の流儀だった。
「高士ちゃんは?」
「父さんと一緒なんじゃない? 私達と遊ばないで、父さんの手伝いするって」
「あらあら、朝あんなにがんばったんだから、遊んじゃえばいいのに」
「高士は遊ぶよりもそっちの方が楽しいんでしょ」
「しょうがないわねぇ、じゃああとで渡しておいてね」
紫恋にもう1万円を渡して、立ち去ろうとする。
と。
「?」
再び紫恋の方を向き直り、細い目で紫恋をじっと見る。その目は、真剣。
「……何?」
「…………………………」
その顔が笑みに変わり。
「ちょっとほつれてるみたい」
バッグからはさみを出して、襟元に出てる糸をちょんと切って。
「じゃ、お母さん忙しいから」
と、そそくさと立ち去っていった。
「…………?」