KAB-studio > Machician > 第7話 灰色の鬼、白き翼 (5)
Machician - 第7話 灰色の鬼、白き翼 (5)
 うめが突然立ち上がり、椅子がゆっくりと傾いて床に倒れる。視線は、ブレスレット型の携帯端末に釘付け。
「……うめ、さん?」
「ちょっと行ってくる!!」
「あっ」
 一度自分の部屋に戻り、30秒も経たないうちにまた出てきて家を飛び出す。
「…………」
 決まっている。
 紫恋さんからだ。
 ――このままでは、紫恋さんが謝ってしまう――。
 うめを追い掛け、玄関を出る。
『ルーナツィアーク!』
 手を伸ばし降りてくる杖を掴むとすかさずまたがり空へと上がる。
うめさんは……」
 いた。
 神社への階段を登り始めた所。
紫恋さんは家に……あっ」
 神社の本殿に隠れた所、以前缶コーヒーを片手に話をした場所だった。
 杖を傾けて進もうとしたその時。
「あれ……」
 待逢家から高士が出てきて、神社の石段へと向かう。
「あ……」
 それを見つけた紫恋が挙動不審になる。
「ああ……」
 うめ高士が遭遇し、うめがぜーはーぜーはー言いながら紫恋の方向を指さす。
「……」
 紫恋が何くわぬ顔で手を挙げ、二人の方へと歩いていく。
「……あれではきっと話せませんね」
 気持ちを切り替え、杖を傾けて下へと降りていく。
「……本当に、この一週間、何やってるんでしょう僕は……」
 そんな独り言を言いながら、杖を離し、階段の下で待つ。
「あれ? 王子、どうしたの?」
「いえ、うめさんが心配でしたので」
 と、にっこり笑って答える。
 ああ、僕はまた……。
 と、それに気付いた紫恋が、申し訳なさそうに手を合わせる。
 いいんですよ。これは、僕の問題なんですから。
 検索