「紫恋さんッ!」
本殿の端まで駆け寄り見上げる。その数トンはあろうかという石人は、紫恋を抱えて想像を遥かに超えた高さまで跳び上がり、真向かい、待逢神社へと降りていた。遠く、待逢神社の境内で土煙が上がり、遅れて鈍い音が響いてくる。
『ルーナツィアーク!』
魔法と共に杖が降り、それを掴む。
「待って王子!」
振り向くと、うめと高士が立っている。
「私にこの前の魔法掛けて! あの身体強化の!」
「俺にも頼む!」
「……高士さんにだけ掛けます。うめさんは」
うめはおもむろにシーバリウの襟首を掴む。
「う、うめさん!?」
「王子……紫恋のこと、何か知ってるでしょ。何があったの!? もしかして、今のとなんか関係あるんじゃないの!?」
「え……!!」
思い当たる事があった。
「紫恋さんと……紫恋さんを、この前の祭の夜……抱きました」
「…………」
ぱちん、と乾いた音が鳴る。
うめの、平手打ち。
「…………あの時の状態を考えると、紫恋さんには、何か特殊な力があったのかもしれません……それが何か関係しているかも……」
「……ん。わかった」
あまりの理解の早さに、シーバリウはきょとんとする。
「急いで私に魔法掛けて。嫌とは言わせないから」
「……」
シーバリウは杖を上げる。
『アーツィガーナ!』
うめと高士は高揚感を感じる。
「二人は紫恋さんを連れて逃げてください」
「王子は?」
「旅館に行きます。こちらに持ってきた剣があるんです。うめさん」
シーバリウはうめに向き合う。
「あれは、異常な強さです。絶対に戦わないでください。僕にとってうめさんは――」
手を取り、握る。
「大事な人だということは決して変わりません。お願いです、絶対に無茶しないでください」
うめは笑顔で応える。
「……うん、ありがと……高士君、行こ!」
「……ああ」
二人は駆け出し、木々の中を駆け下りていった。
本殿の端まで駆け寄り見上げる。その数トンはあろうかという石人は、紫恋を抱えて想像を遥かに超えた高さまで跳び上がり、真向かい、待逢神社へと降りていた。遠く、待逢神社の境内で土煙が上がり、遅れて鈍い音が響いてくる。
『ルーナツィアーク!』
魔法と共に杖が降り、それを掴む。
「待って王子!」
振り向くと、うめと高士が立っている。
「私にこの前の魔法掛けて! あの身体強化の!」
「俺にも頼む!」
「……高士さんにだけ掛けます。うめさんは」
うめはおもむろにシーバリウの襟首を掴む。
「う、うめさん!?」
「王子……紫恋のこと、何か知ってるでしょ。何があったの!? もしかして、今のとなんか関係あるんじゃないの!?」
「え……!!」
思い当たる事があった。
「紫恋さんと……紫恋さんを、この前の祭の夜……抱きました」
「…………」
ぱちん、と乾いた音が鳴る。
うめの、平手打ち。
「…………あの時の状態を考えると、紫恋さんには、何か特殊な力があったのかもしれません……それが何か関係しているかも……」
「……ん。わかった」
あまりの理解の早さに、シーバリウはきょとんとする。
「急いで私に魔法掛けて。嫌とは言わせないから」
「……」
シーバリウは杖を上げる。
『アーツィガーナ!』
うめと高士は高揚感を感じる。
「二人は紫恋さんを連れて逃げてください」
「王子は?」
「旅館に行きます。こちらに持ってきた剣があるんです。うめさん」
シーバリウはうめに向き合う。
「あれは、異常な強さです。絶対に戦わないでください。僕にとってうめさんは――」
手を取り、握る。
「大事な人だということは決して変わりません。お願いです、絶対に無茶しないでください」
うめは笑顔で応える。
「……うん、ありがと……高士君、行こ!」
「……ああ」
二人は駆け出し、木々の中を駆け下りていった。