宙の上。
眼下に、見慣れない角度の鳥居。
「!!」
その上をかすめるようにして石人は境内へと落ちる。地面に穴が空き、土砂が上へと吹き上がる。「けほっけほっ……!ッ」
視界も呼吸もままならない中で、紫恋は放り出される。ささくれ立った地面が容赦なく体を削る。
「ううっ……」
体中に、痛み。だが、それ以前に。
体が、動かない。
「……」
見上げると、そこに、石人。
別に、叩かれた時のダメージは、ない。シーバリウの魔法によって、空気のクッションが直接的なダメージを防いでいた。
だが、心は折れていた。
「は、はは……」
あり得ない事だった。
テレビでAPやら変な生物兵器やらの映像を見ていても。
目の前でシーバリウの魔法を見ていても。
その石人は、あり得ない存在だった。
「そうか……」
紫恋は納得する。
私は「死にたい」と願った。
――石片が擦れ合い異常な音を上げる。
そか、今の「死にたい」って言葉に反応したんだ。
――その音は、歯ぎしりのように。
この言葉、この私の意志に反応してるんだ。
私の心が、この気持ちが餌なのかな。
うめの顔が浮かぶ。
あの笑顔に、もう顔は合わせられないし、食べられても――。
その考えは、吹き飛ぶ。
石人の頭部が、イソギンチャクのように、石片の触手として蠢く。頭部が傾き、紫恋へと向けられる。震え、振動し、回転する。石粉が舞い上がり、耳障りな音が紫恋を包む。
それは。
触れた物を血飛沫すら擦り潰してしまう、完全なる顎。
手が震える。
足が硬まる。
涙が止まらない。
想像の痛みが、現実の痛みのように体中を掻き回す。
「――――――――」
声にならない悲鳴、ふいごのようにただ吹き出る息。
やだ……。
嫌だ……。
嫌だ!!
逃げたいのに、体が、動か
「紫恋ちゃん!!」
母の、声だった。
眼下に、見慣れない角度の鳥居。
「!!」
その上をかすめるようにして石人は境内へと落ちる。地面に穴が空き、土砂が上へと吹き上がる。「けほっけほっ……!ッ」
視界も呼吸もままならない中で、紫恋は放り出される。ささくれ立った地面が容赦なく体を削る。
「ううっ……」
体中に、痛み。だが、それ以前に。
体が、動かない。
「……」
見上げると、そこに、石人。
別に、叩かれた時のダメージは、ない。シーバリウの魔法によって、空気のクッションが直接的なダメージを防いでいた。
だが、心は折れていた。
「は、はは……」
あり得ない事だった。
テレビでAPやら変な生物兵器やらの映像を見ていても。
目の前でシーバリウの魔法を見ていても。
その石人は、あり得ない存在だった。
「そうか……」
紫恋は納得する。
私は「死にたい」と願った。
――石片が擦れ合い異常な音を上げる。
そか、今の「死にたい」って言葉に反応したんだ。
――その音は、歯ぎしりのように。
この言葉、この私の意志に反応してるんだ。
私の心が、この気持ちが餌なのかな。
うめの顔が浮かぶ。
あの笑顔に、もう顔は合わせられないし、食べられても――。
その考えは、吹き飛ぶ。
石人の頭部が、イソギンチャクのように、石片の触手として蠢く。頭部が傾き、紫恋へと向けられる。震え、振動し、回転する。石粉が舞い上がり、耳障りな音が紫恋を包む。
それは。
触れた物を血飛沫すら擦り潰してしまう、完全なる顎。
手が震える。
足が硬まる。
涙が止まらない。
想像の痛みが、現実の痛みのように体中を掻き回す。
「――――――――」
声にならない悲鳴、ふいごのようにただ吹き出る息。
やだ……。
嫌だ……。
嫌だ!!
逃げたいのに、体が、動か
「紫恋ちゃん!!」
母の、声だった。