暗闇。
でも、お互いの姿は見えている。二人の女性が、互い違いになるように、黒い地面に寝そべっていた。だらしなく両腕を伸ばし、くつろいでいるようにも見えるが、その表情は疲労感を感じさせるものだった。
「後何分?」
「12分」
訊いたのは、金色の髪の女性。青い瞳、ほりの深い欧米系、二十代〜三十代に見える。金髪を頭の後ろでまとめる、宝石がちりばめられた巨大なバレッタが目立つ。
答えたのは、黒髪の女性。絹のようなつやを持つ黒色の髪が腰まで伸びている。切り揃えた前髪が目のすぐ上に掛かるくらい長く、顔は子供っぽく見えるが、背は高く170ほど、さらに手足は細く、それがより背の高さを印象づけていた。
二人とも、黒のスーツ、黒のネクタイ、袖には白い螺旋の模様。
「後何分?」
「さっき訊きましたよ」
「なんか別のこと話すと時間過ぎちゃいそうだし、何も話さないと寝ちゃいそうだし」
「私は阻催眠掛けてるけど」
「私も掛けてもらおうかな、ってゆーかその機能付けようかな」
「嫌ですよ私、次もこんなハードスケジュールが続くなんて想像したくないです」
「何時間寝てない?」
「395時間。って、起きたの一緒じゃないですか」
「ってことはあれから仮眠取ってないの?」
「取ってないのはお互い様でしょ。……あれ?」
気配に気付き、二人は体を起こす。闇の中から、色黒の青年が現れる。二人と同じ服装、白い髪が肩胛骨のあたりまで伸びている。体つきは男のように見えるが、顔は中性的で、発した声は男とも女とも取れる声だった。
「フィオ、アオバ、定時報告を聞きにきた」
「定時じゃないですよ、かいちょー」
「というか、こんなところに来てる暇あるんですか?」
黒髪の少女がいじけて睨む。
「色々とあってな。まずは報告を聞こう」
「はい、9分後に開戦、15分後に鎮圧完了予定です」
「予定通りだな。問題はないか?」
「予測よりAPの数が多いくらいです。その分、機械兵装が少ないので問題ありません」
「そうか。ではこちらからの指示だ。本件完了後、シフトを変更。アオバは準待機へ。フィオはウィルゴとペアを組み、割り込みの案件に取りかかってもらう」
金髪は表情が曇り、黒髪は明るくなる。
「もちろんフィオはそのあと準待機へ移行してもらう」
「それが嫌じゃないんです、アオバ以外とっていうのが……ウィルゴと、ですか」
「以上だ。時間だ、良い結果を待っている」
姿が消え、二人は顔を見合わせる。
「ごめんね、先に休んで」
「いいっていいって……人材、追加して欲しいなー」
「無茶言わないの。……始めますね」
黒髪の女が両手を広げると、黒の覆いは消え去り、一面の砂漠が現れる。左右の遥か遠くに、今にも戦争を始めそうな軍隊が見え隠れしていた。
「じゃ、ぱっぱと終わらせますか」
でも、お互いの姿は見えている。二人の女性が、互い違いになるように、黒い地面に寝そべっていた。だらしなく両腕を伸ばし、くつろいでいるようにも見えるが、その表情は疲労感を感じさせるものだった。
「後何分?」
「12分」
訊いたのは、金色の髪の女性。青い瞳、ほりの深い欧米系、二十代〜三十代に見える。金髪を頭の後ろでまとめる、宝石がちりばめられた巨大なバレッタが目立つ。
答えたのは、黒髪の女性。絹のようなつやを持つ黒色の髪が腰まで伸びている。切り揃えた前髪が目のすぐ上に掛かるくらい長く、顔は子供っぽく見えるが、背は高く170ほど、さらに手足は細く、それがより背の高さを印象づけていた。
二人とも、黒のスーツ、黒のネクタイ、袖には白い螺旋の模様。
「後何分?」
「さっき訊きましたよ」
「なんか別のこと話すと時間過ぎちゃいそうだし、何も話さないと寝ちゃいそうだし」
「私は阻催眠掛けてるけど」
「私も掛けてもらおうかな、ってゆーかその機能付けようかな」
「嫌ですよ私、次もこんなハードスケジュールが続くなんて想像したくないです」
「何時間寝てない?」
「395時間。って、起きたの一緒じゃないですか」
「ってことはあれから仮眠取ってないの?」
「取ってないのはお互い様でしょ。……あれ?」
気配に気付き、二人は体を起こす。闇の中から、色黒の青年が現れる。二人と同じ服装、白い髪が肩胛骨のあたりまで伸びている。体つきは男のように見えるが、顔は中性的で、発した声は男とも女とも取れる声だった。
「フィオ、アオバ、定時報告を聞きにきた」
「定時じゃないですよ、かいちょー」
「というか、こんなところに来てる暇あるんですか?」
黒髪の少女がいじけて睨む。
「色々とあってな。まずは報告を聞こう」
「はい、9分後に開戦、15分後に鎮圧完了予定です」
「予定通りだな。問題はないか?」
「予測よりAPの数が多いくらいです。その分、機械兵装が少ないので問題ありません」
「そうか。ではこちらからの指示だ。本件完了後、シフトを変更。アオバは準待機へ。フィオはウィルゴとペアを組み、割り込みの案件に取りかかってもらう」
金髪は表情が曇り、黒髪は明るくなる。
「もちろんフィオはそのあと準待機へ移行してもらう」
「それが嫌じゃないんです、アオバ以外とっていうのが……ウィルゴと、ですか」
「以上だ。時間だ、良い結果を待っている」
姿が消え、二人は顔を見合わせる。
「ごめんね、先に休んで」
「いいっていいって……人材、追加して欲しいなー」
「無茶言わないの。……始めますね」
黒髪の女が両手を広げると、黒の覆いは消え去り、一面の砂漠が現れる。左右の遥か遠くに、今にも戦争を始めそうな軍隊が見え隠れしていた。
「じゃ、ぱっぱと終わらせますか」