「ママっ、ママ!!」
泣きじゃくるうめに、はこねが笑顔を向ける。
「大丈夫だって、弾は当たってないみたいだから」
はこねの服はずぶ濡れのボロボロになっていたが、血は流れていなかった。
「王子、回復魔法掛けてあげて」
「申し訳ありません、僕の回復魔法はAPにはあまり効果がなくて……」
旅館山田屋。
はこねのすぐ側で錦は歯を食いしばる。
「いったい、いったい何なんだよ……」
「多分あれ、なんかの軍隊だと思う」
紫恋が呼吸を整えながら説明する。
「ワース着てたし、あの火花、銃弾かなんかだと思う」
「強い魔法力を感じたので行ってみたら、皆さん襲われていて……でも、軍隊が魔法だなんて」
「今はそういうの関係ないもの。APだって魔法を使ってるんだし。銃はきっとリングガン、銃弾も特殊なものだと思う」
「なんで軍隊なんかが……」
「そりゃ、目的はひとつでしょ」
石人。
「そんな……」
「今はね、HAC関連組織の技術を奪ったり、そういうことをするための私設軍隊があったりするのよ。でも……」
ジャージがテーブルを叩く。
「まさかうちが狙われるなんて……」
なんで私、気付かなかったの!? ちょっと考えれば思い付くはずなのに……。
「どうしよう、警察に電話する?」
「HACのサポートセンターっていう手もあるけど」
「それでは間に合わない」
全く聞き覚えのない声に、全員が振り向く。
そこには、見たことのない男が立っていた。黒いスーツ姿、袖には白い線が引かれている。顔は細面、長い髪は全て後ろに流している。目を閉じ、慎んだ表情を向けている。
「ちょ……調停委員会……」
袖の模様を見て、ジャージは呟く。
「私はHAC調停委員会、ウィルゴ」
その言葉と共に、無数の目が開く。
「ひっ!」
まぶただけではない。頬が、顎が、鼻が、額が、喉が、手が、指先が、ぱっくりと裂け、その中からきらびやかな球が現れる。二重円の瞳が無数の目玉に浮かび上がり、それぞれが各々の方向を向く。
「君達は今、危機的状況下にある。まずは覚悟しろ」
その声音は、落ち着き、冷静で、冷たく、そして威圧的だった。
続く。
泣きじゃくるうめに、はこねが笑顔を向ける。
「大丈夫だって、弾は当たってないみたいだから」
はこねの服はずぶ濡れのボロボロになっていたが、血は流れていなかった。
「王子、回復魔法掛けてあげて」
「申し訳ありません、僕の回復魔法はAPにはあまり効果がなくて……」
旅館山田屋。
はこねのすぐ側で錦は歯を食いしばる。
「いったい、いったい何なんだよ……」
「多分あれ、なんかの軍隊だと思う」
紫恋が呼吸を整えながら説明する。
「ワース着てたし、あの火花、銃弾かなんかだと思う」
「強い魔法力を感じたので行ってみたら、皆さん襲われていて……でも、軍隊が魔法だなんて」
「今はそういうの関係ないもの。APだって魔法を使ってるんだし。銃はきっとリングガン、銃弾も特殊なものだと思う」
「なんで軍隊なんかが……」
「そりゃ、目的はひとつでしょ」
石人。
「そんな……」
「今はね、HAC関連組織の技術を奪ったり、そういうことをするための私設軍隊があったりするのよ。でも……」
ジャージがテーブルを叩く。
「まさかうちが狙われるなんて……」
なんで私、気付かなかったの!? ちょっと考えれば思い付くはずなのに……。
「どうしよう、警察に電話する?」
「HACのサポートセンターっていう手もあるけど」
「それでは間に合わない」
全く聞き覚えのない声に、全員が振り向く。
そこには、見たことのない男が立っていた。黒いスーツ姿、袖には白い線が引かれている。顔は細面、長い髪は全て後ろに流している。目を閉じ、慎んだ表情を向けている。
「ちょ……調停委員会……」
袖の模様を見て、ジャージは呟く。
「私はHAC調停委員会、ウィルゴ」
その言葉と共に、無数の目が開く。
「ひっ!」
まぶただけではない。頬が、顎が、鼻が、額が、喉が、手が、指先が、ぱっくりと裂け、その中からきらびやかな球が現れる。二重円の瞳が無数の目玉に浮かび上がり、それぞれが各々の方向を向く。
「君達は今、危機的状況下にある。まずは覚悟しろ」
その声音は、落ち着き、冷静で、冷たく、そして威圧的だった。
続く。