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Machician - 第9話 君がそこにいるから (20)
「大丈夫ですか?」
「うん、魔法のおかげで怪我とかはないみたい。見えないから分からないけど。今どこだろう」
 室内のどこにいるのか調べるため、ジャージは手探りで壁を辿る。
「あっ」
「それは、僕の頬ですよ」
 柔らかい、暖かい感触。
「ご、ごめん」
 その後ろの壁に触れる。
「ガナーシートの方みたい。でも車体が横に傾いてる。こっち」
 シーバリウの手を引いて、間の通路へと戻る。
「外に出た方が安全でしょうか」
「多分ここにいた方が安全。ワースのセンサーだと暗闇でもこちらのことがはっきり見えるし、自動照準だとどうやっても逃げられないだろうから。それに」
「僕の魔法も使えない……あ、外装の強化、掛け直します。10、9、8……」
 とん、とん、と足でリズムを取る。
「3、2」
 そして。
『ツィアガウィナ!』
 むにゅ。
「あっ」
「!!」
 魔法を唱えた時に広げた手が、ジャージの胸に当たっていた。
「ご、ごめんなさい」
「だいじょうぶ、気にしてないから」
 暗闇で良かった〜、そうじゃなかったら顔真っ赤なの分かっちゃうかも……暗闇?
 ふと気付けば。
 お互いの顔すら見えない闇の中で、シーバリウとふたりっきり。
 って、何不謹慎なこと考えてるのよ!
「……襲ってこないね」
「そんな、僕はそんなことしません!」
「へ?」
「あ……」
 きょとんするジャージ
「ごめんなさい、そういう意味じゃないですよね」
 僕、何言ってるんだろう……こんな状況で不謹慎なこと考えるなんて!
『あの』
 その、ふたりの言葉がハモった瞬間。
 稲妻が、落ちた。
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