KAB-studio > Machician > 第10話 HACの街 (2)
Machician - 第10話 HACの街 (2)
 昨日。
「……というわけで、三日前の襲撃に関しては以上です」
「以上、って」
 足を組み、苛ついて、紫恋は訊き返した。
 旅館山田屋の一階、いつもの食堂で、ジャージの「報告」は、納得のいかないものだった。
「仕方ないでしょ、これ以上は情報管理クラス4以上が必要になる内容なんだもの。私だって3までしか持ってないし、私が持っててもここでは言えないんだから」
「でも、当事者にも、犯人は言えません、でももう襲ってきません、じゃ納得できないって」
「わーってる。別に私だってHAC側の人間じゃないし、被害者なんだから」
 ジャージの左袖は、中身なく垂れていた。
「……すみません」
「あんたが謝んないの」
 シーバリウの言葉を紫恋がフォローする。
「そうよ、あの時はあの魔法しかなかったんだから。それにちゃんとくっつけてもらえるんだから心配しないの」
「……」
 シーバリウはそれでも、顔をうつむけ、そむけていた。
「なら、今回の件はとりあえずそこまでとしよう。問題は、あれをどうするか、ということだ」
 神主が、話を進めさせ、ジャージはうなずく。
「石人についても、HACの協力を得られる事になりました。明日申請を出しますのでそれからということになりますが、間に合うと思います」
「信用していいのかな?」
「正直、信用しすぎるのはいけないと思いますが、希望は持てると思います」
「あやふやだな」
「そのくらいがちょうどいい。気を緩めていいような状況ではないからな」
「あの〜、神社の建て直しの費用って出してもらえるのかしら」
 むらさきがおずおずともせずに訊く。
「ごめんなさい」
「だからあんたが謝んないの」
「後回しになる可能性もありますが、申請は出しておきます。過去実績では……多分大丈夫だと思います」
 ジャージが手に持つ紙が点り、その場で検索結果を確認する。
 質問がなさそうなことを確認してから、ジャージは付け加える。
「明日、腕の治癒と申請も兼ねて、会員の継続手続きをしに幕張のHAC特別区に行ってきます。その結果を報告しますので、明日の夜もここで、ということでよろしいでしょうか」
HAC特別区って?」
 眠そうだったうめが、興味を示して目を覚ます。
「なんなら一緒に来る?」
 の一言に、さらに目を輝かせた。
 検索