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Machician - 第10話 HACの街 (11)
「じゃ、どうしようか」
「とりあえず、本部というのを探しましょう。あまり時間はないみたいですし」
 レストランの階下、階段を降りた所で、シーバリウは紙のパンフレットを取り出す。
「現在位置は分かる?」
「えーっとですね」
 周囲の風景や店名と、パンフレットの地図を照らし合わせる。目の前を人の河が流れ視界を遮る中、シーバリウは首を伸ばしてまわりを見渡し、紫恋は手で顔を扇ぐ。
「つか、全部オープンってなんでなんだろう。店の中で涼むってできないし……」
「ですよね……!」
 シーバリウは手を伸ばし、紫恋の上腕を掴む。急に引っ張られた紫恋は目を丸くしつつ、その視界の端に、見ず知らずの伸びる手を見つけた。
「!っ、スリ!?」
 人混みからバッグへと伸ばされた手はその端を掴み、形が歪む。
 シーバリウは即座に反対の手で紫恋を傾ける。バッグの取っ手が紫恋の腕をするりとすり抜け、バッグを持って飛び上がる。
「!」
「なに?」
フィルツィウォード!!
 まわりで声が上がる中、シーバリウは手を伸ばし魔法を唱える。手元から風が導かれ、宙に浮いた男を絡み取る。白いTシャツとベージュのパンツ、短い黒髪に麦わら帽子。
「ぐっ、うざっ!!」
 30代後半に見えるその表情を歪ませて、男は風の束縛を振り解こうと無理矢理体を振り回す。
AP!?」
白糸紡ぎし、風の絹っ
 シャツをたくし上げる紫恋を見て、シーバリウも意を決する。
アーツィガーナ!
纏いし我が身、藍の空へと!!
 男が大きく体を回転させ風の戒めから脱し店の軒に降りた瞬間、紫恋の背を神々しい羽根が疾り、シーバリウは地面を跳ねた。
「!?」
 一般人と思っていたのか、男は舌打ちをして飛び上がる。長屋の屋上へと上がり、プレハブ倉庫やゴミの山を避けるように跳ねていく。
「待ちなさい!!」
 紫恋は羽ばたき、その一度で飛び上がっていたシーバリウを追い抜く。
「は、速い……」
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