オーバーライドされたメソッドを呼び出す

　前ページでは、アップキャストをすることで「使えるフィールド・メソッドがスーパークラスのものに限られる」ということを説明しました。
　この状態で、スーパークラスの「オーバーライドされたメソッド」を呼び出すと、面白いことが起きます。

// OverridedSub4Runner.java
/**
 * 普通のクラス。
 * メソッド1つ持ちます。
 * （HasOneMethodSuperクラスと全く同じです）
 */
class HasOneMethodSuper4
{
	/**
	 * 自クラスの名前を出力するメソッドです。
	 */
	void printMyName()
	{
		System.out.println( "HasOneMethodSuper4" );
	}
}
/**
 * HasOneMethodSuper4クラスから継承した、サブクラス。
 * メソッドを追加しています。
 * （OverridedSubクラスと全く同じです）
 */
class OverridedSub4 extends HasOneMethodSuper4
{
	/**
	 * 自クラスの名前を出力するメソッドです。
	 * オーバーライドしています。
	 */
	void printMyName()
	{
		System.out.println( "OverridedSub4" );
	}
}
/**
 * 実行用クラス。このクラスを実行してください。
 */
class OverridedSub4Runner
{
	public static void main( String[] args )
	{
		// インスタンスを1つ作ります。
		// ただし、参照型変数の型はスーパークラスです。
		HasOneMethodSuper4 refSuper = new OverridedSub4();
		// printMyName()メソッドを呼び出します。
		refSuper.printMyName();
		// 出力結果：
		// OverridedSub4
	}
}

　このプログラムは「5.3 オーバーライドで「上書き」する」に似たプログラムです。
　HasOneMethodSuper4クラスとOverridedSub4クラスはその時のものと全く同じで、クラス名が違うだけです。
　継承関係も同じで、HasOneMethodSuper4クラスからOverridedSub4クラスに継承しています。HasOneMethodSuper4クラスがスーパークラス、OverridedSub4クラスとなります。
　また、HasOneMethodSuper4クラスのprintMyName()メソッドをOverridedSub4クラスでオーバーライドしています。

　インスタンスの作成箇所は少し違います。
　参照型変数の型をスーパークラスのHasOneMethodSuper4クラスにして、アップキャストして受け取っています。

		// インスタンスを1つ作ります。
		// ただし、参照型変数の型はスーパークラスです。
		HasOneMethodSuper4 refSuper = new OverridedSub4();

　インスタンスはOverridedSub4クラス型なので、中にHasOneMethodSuper4クラスのインスタンスも作られ、オーバーライドしているprintMyName()メソッドが結びつけられます。

【図1】 インスタンスの作成

　このrefSuper変数の型はHasOneMethodSuper4クラスですので、HasOneMethodSuper4クラスのフィールド・メソッドのみ使用できます。
サブクラスであるOverridedSub4クラスのフィールド・メソッドは使えません。

　さてでは、refSuper変数を通して、printMyName()メソッドを呼び出すと、どうなるのでしょう。
　printMyName()メソッドはオーバーライドしているわけですから、スーパークラスにもサブクラスにもあります。
　refSuper変数はスーパークラスの参照型変数ですから、当然スーパークラスのprintMyName()メソッドが呼び出される……と思いきや、実はサブクラスの、オーバーライドしたメソッドが呼び出されます。

		// printMyName()メソッドを呼び出します。
		refSuper.printMyName();
		// 出力結果：
		// OverridedSub4

　この実行結果のように、OverridedSub4クラスのprintMyName()メソッドが呼び出されています。
　refSuper変数はスーパークラス・HasOneMethodSuper4クラスなのに、呼び出されたのはサブクラス・OverridedSub4クラスのprintMyName()メソッドということです。

　なぜこのようになるかというと、「オーバーライドされたメソッドからオーバーライドしたメソッドへひもが付いている」からです。

【図2】 オーバーライドしたメソッドが呼び出される

　「5.3 オーバーライドで「上書き」する」で説明したように、メソッドをオーバーライドすると、オーバーライドされたメソッドからオーバーライドしたメソッドへひもが付けられ、「オーバーライドしたメソッド」が呼び出されるようになります。
　そのため、スーパークラスの参照型変数を通して呼び出しても、「オーバーライドしたメソッド」が呼び出されます。
　refSuper変数はスーパークラスの参照型変数ですので、スーパークラスのprintMyName()メソッドが呼び出されようとするのですが、このメソッドはサブクラスでオーバーライドしているので、自動的にサブクラスのprintMyName()メソッドが呼び出されるわけです。

　実は、これは「5.4 オーバーライドされたメソッドを呼び出すと？」と同じ現象です。
　あの時も、スーパークラスのprintMyName()メソッドを呼び出したと思ったら、サブクラスのprintMyName()メソッドが自動的に呼び出されていました。
　オーバーライドをすることで、一見スーパークラスのメソッドを呼び出したように見えて、実はサブクラスにある「オーバーライドしたメソッド」が呼び出されるようになるわけです。