毎週水曜日にこうして近くの公園に行き絵を描くこと、いつからかそれが大和高校美術部の主な活動内容になっていた。
「いい日和よねー、なんか眠たくなっちゃう」
「そうかな、ちょっと寒いような気もするけど」
すぐ近くの水面が、そう感じさせるのかもしれない。暖かいと言った舞がそう思う。公園の中央にある小さな池を、木の柵と湿り気のある道とが囲み、公園全体を木々が覆う。
「舞さんは、いつもここに来ると池を見ていますね」
そして、いつも悲しい瞳をしている……そう付け加えられなかった。
「ずっと前からよ、あたしにも理由教えてくれないし」
「うん……ちょっとあってね、まあ、小さい頃におぼれちゃった、みたいな感じかな」
「ということは、それよりも恥ずかしいことなのか?」
「そうかもね……あ、アイスクリーム屋さんだー!」
四人の視線の先に、小さなバンと白いテーブルセットがあった。そこへと舞は駆けていく。
「子供みたい」
「子供なんじゃないかな」
「子供なんだよ、きっと」
「そこ、うるさいよ!」
「聞こえてたか……」
三人が着いたときには、舞はもう自分のバニラアイスを頼んでいた。
「こんなのやってるんだ」
「毎年、今ぐらいから秋ぐらいまでね」
「そっかー、俊雄は知らないんだもんね」
舞を含めた四人が、一つのテーブルに座る。アイスクリームショップの前には、時々いそうな場違いな男と、ベビーカーを囲んで談笑する主婦達がいるだけだった。
もしかしたら、これが公園にいる全員かもしれない。
「そういえばさ、なんで美術部なんかに入ったの?」
「なんかにってことはないでしょ、自分の部に」
「ははは、まあ信吾が誘ってくれたからね」
「だってよ、こいつ治るまで部活休むって言うからさ」
「じゃあ治ったらサッカー部戻っちゃうんだ」
「そりゃそうでしょ、何てったって我が校のエースなんだから」
「エースってなんか野球っぽい言い方」
「そう?」
舞は、この瞬間を「幸せだなぁ〜」と感じていた。自分自身不思議に思いながらも、この春の日和、友達と一緒に何の意味もない無駄話をする幸せが、とてもうれしかった。
何か――良くないことが起きる前兆だったりして。
「これ、なんて言うんだっけ」
その突然の呼びかけに、舞は振り向いてしまった。
「いい日和よねー、なんか眠たくなっちゃう」
「そうかな、ちょっと寒いような気もするけど」
すぐ近くの水面が、そう感じさせるのかもしれない。暖かいと言った舞がそう思う。公園の中央にある小さな池を、木の柵と湿り気のある道とが囲み、公園全体を木々が覆う。
「舞さんは、いつもここに来ると池を見ていますね」
そして、いつも悲しい瞳をしている……そう付け加えられなかった。
「ずっと前からよ、あたしにも理由教えてくれないし」
「うん……ちょっとあってね、まあ、小さい頃におぼれちゃった、みたいな感じかな」
「ということは、それよりも恥ずかしいことなのか?」
「そうかもね……あ、アイスクリーム屋さんだー!」
四人の視線の先に、小さなバンと白いテーブルセットがあった。そこへと舞は駆けていく。
「子供みたい」
「子供なんじゃないかな」
「子供なんだよ、きっと」
「そこ、うるさいよ!」
「聞こえてたか……」
三人が着いたときには、舞はもう自分のバニラアイスを頼んでいた。
「こんなのやってるんだ」
「毎年、今ぐらいから秋ぐらいまでね」
「そっかー、俊雄は知らないんだもんね」
舞を含めた四人が、一つのテーブルに座る。アイスクリームショップの前には、時々いそうな場違いな男と、ベビーカーを囲んで談笑する主婦達がいるだけだった。
もしかしたら、これが公園にいる全員かもしれない。
「そういえばさ、なんで美術部なんかに入ったの?」
「なんかにってことはないでしょ、自分の部に」
「ははは、まあ信吾が誘ってくれたからね」
「だってよ、こいつ治るまで部活休むって言うからさ」
「じゃあ治ったらサッカー部戻っちゃうんだ」
「そりゃそうでしょ、何てったって我が校のエースなんだから」
「エースってなんか野球っぽい言い方」
「そう?」
舞は、この瞬間を「幸せだなぁ〜」と感じていた。自分自身不思議に思いながらも、この春の日和、友達と一緒に何の意味もない無駄話をする幸せが、とてもうれしかった。
何か――良くないことが起きる前兆だったりして。
「これ、なんて言うんだっけ」
その突然の呼びかけに、舞は振り向いてしまった。