美咲は北口前で、古びた大きな鞄を置いた。実際の歳には見えない若々しい顔は、引き締まった表情のおかげでいつもより見かけの年齢を上げていた。
「ったく、なんでこんな空気の悪い所に住めるのかしら」
変に乾いた、のどを痛めそうな空気は、美咲には耐えられないものだった。
「かあさん!」
遠くから歩いてくる奨に、美咲は自然と笑みがこぼれた。なんだかんだ言っても、久しぶりに会う家族は、いい。
「奨、元気そうじゃない」
「うん」
「お父さんと舞は?」
「父さんは家にいるよ。舞は今学校」
「……じゃあなんであんたがここにいるの」
「え、えーっと……とりあえずタクシー乗ろうよ」
笑顔を含んだため息を一つ、美咲はついた。
「どこまでですか?」
その女性運転手の声にビックリするのを見て、奨はあきれる。
「相変わらずだね……」
「もう何年もほこらから出ていなかったもの。でも、変わらないでいて欲しかった物は変わっていく、変わって欲しかった物は変わってない」
「でも、母さんは変わってない。前よかきれいになったんじゃないの?」
「おだてたって何も出ないわよ」
流れ行く外の景色は、それなりに目新しい。でも、それほどでもなかった。
「そうそう」
自分の方を向いた美咲の顔を見て、奨はイヤな予感がした。
「奨ちゃんにお願いがあるの。言うこと聞いてくれたらお小遣いあげるから」
奨はただ苦笑いするしかなかった。
「ったく、なんでこんな空気の悪い所に住めるのかしら」
変に乾いた、のどを痛めそうな空気は、美咲には耐えられないものだった。
「かあさん!」
遠くから歩いてくる奨に、美咲は自然と笑みがこぼれた。なんだかんだ言っても、久しぶりに会う家族は、いい。
「奨、元気そうじゃない」
「うん」
「お父さんと舞は?」
「父さんは家にいるよ。舞は今学校」
「……じゃあなんであんたがここにいるの」
「え、えーっと……とりあえずタクシー乗ろうよ」
笑顔を含んだため息を一つ、美咲はついた。
「どこまでですか?」
その女性運転手の声にビックリするのを見て、奨はあきれる。
「相変わらずだね……」
「もう何年もほこらから出ていなかったもの。でも、変わらないでいて欲しかった物は変わっていく、変わって欲しかった物は変わってない」
「でも、母さんは変わってない。前よかきれいになったんじゃないの?」
「おだてたって何も出ないわよ」
流れ行く外の景色は、それなりに目新しい。でも、それほどでもなかった。
「そうそう」
自分の方を向いた美咲の顔を見て、奨はイヤな予感がした。
「奨ちゃんにお願いがあるの。言うこと聞いてくれたらお小遣いあげるから」
奨はただ苦笑いするしかなかった。