「行って来るってちょっと待ってよ!」
「ん?」
とただ引き留められただけのように、またすぐ行きかねない状態で雅樹は振り向いた。
「だって、まだなんにも話してないじゃない!」
「ええと、どこが怪しいのかとか、まずどこを当たるべきなのかとか、そういうことをまず検討してからの方がいいと思いますけど」
「そうゆうんわ、俺と穂香には必要ないの」
雅樹はほんの少しの装備――財布を持ったり時計を着けたり――をしただけで、服も着替えずに外に出るつもりのようだった。
「どうする? ここで待っててもいいし、それとも付いてくるか?」
「どうする?」
と舞は言いながら、バッグをすでに持っていた。
「僕も行きます」
と俊雄は言った時にはすでに準備を終えていた。
「じゃぁ……」
と、恭子と信吾は顔を見合わせながら答えた。元々、ここに来たがっていたのはこの二人だったが、なんかよくわかんない雅樹のペースに戸惑っていて反応は遅れていた。
「でもどこに行くの?」
「そんな二人いっぺんに言わないでくれよ」
「あ、柊さんから話していいですよ」
「そうか? あん? だってよ、善は急げって、そりゃそうだけどよ、うーん……」
そう観葉植物と話をしている雅樹を、「妙なモノを見る目」をしている三人とは違うクールな目つきで見る舞に俊雄は気づく。
「慣れてるん、ですね」
「来たばっかりの頃、自炊大変だろうってことで家に呼んだんだ……なんか散々だったなー」
ソファに深々と座り、膝に両肘をついて両手のひらで頬を覆って、細い遠くを見るような目で雅樹を見つめている。
「柊さんが雅樹に何か言っても、私達には聞こえない。だから、私達はいつも柊さんの言葉を遮るおじゃま虫……なのよね」
「舞さん――」
そう声を掛けて、何かもうひとつ――さりげない「ひとこと」――それさえも、付け加えることができない俊雄は、でも、見下ろした所にあるその舞の姿は、いいなぁ、そう思っていた。
そういえば、私服の舞を見たのは、これが初めてだったかもしれない。濃いベージュ色をした薄手のコートの中には白いシャツと制服より少し長めのチェックのスカート、そこからのびる素の両足は
「とゆーわけで、ま、もう少しゆっくりしようか」
「……」
舞は無言で再びコートを脱いで椅子に座り、俊雄は惚けていた自分に気づいて顔を赤らめていた。
「で、できれば説明して欲しいんだけどなー」
雅樹に振り回されっぱなしの三人とは違い、舞は紅茶をすすって雅樹にそう訊いた。
「説明……」
雅樹は横を向いて、ただただ神妙に何かを聞き始めた。そして、その顔は次第に難しくなっていった。
「うーん」
そして、腕を組んでうなり、再び横を向いた。
「それ、全部説明すんの大変だな」
「めんどくさがりやだし……」
ずずと舞は紅茶をすすった。
「ん?」
とただ引き留められただけのように、またすぐ行きかねない状態で雅樹は振り向いた。
「だって、まだなんにも話してないじゃない!」
「ええと、どこが怪しいのかとか、まずどこを当たるべきなのかとか、そういうことをまず検討してからの方がいいと思いますけど」
「そうゆうんわ、俺と穂香には必要ないの」
雅樹はほんの少しの装備――財布を持ったり時計を着けたり――をしただけで、服も着替えずに外に出るつもりのようだった。
「どうする? ここで待っててもいいし、それとも付いてくるか?」
「どうする?」
と舞は言いながら、バッグをすでに持っていた。
「僕も行きます」
と俊雄は言った時にはすでに準備を終えていた。
「じゃぁ……」
と、恭子と信吾は顔を見合わせながら答えた。元々、ここに来たがっていたのはこの二人だったが、なんかよくわかんない雅樹のペースに戸惑っていて反応は遅れていた。
「でもどこに行くの?」
「そんな二人いっぺんに言わないでくれよ」
「あ、柊さんから話していいですよ」
「そうか? あん? だってよ、善は急げって、そりゃそうだけどよ、うーん……」
そう観葉植物と話をしている雅樹を、「妙なモノを見る目」をしている三人とは違うクールな目つきで見る舞に俊雄は気づく。
「慣れてるん、ですね」
「来たばっかりの頃、自炊大変だろうってことで家に呼んだんだ……なんか散々だったなー」
ソファに深々と座り、膝に両肘をついて両手のひらで頬を覆って、細い遠くを見るような目で雅樹を見つめている。
「柊さんが雅樹に何か言っても、私達には聞こえない。だから、私達はいつも柊さんの言葉を遮るおじゃま虫……なのよね」
「舞さん――」
そう声を掛けて、何かもうひとつ――さりげない「ひとこと」――それさえも、付け加えることができない俊雄は、でも、見下ろした所にあるその舞の姿は、いいなぁ、そう思っていた。
そういえば、私服の舞を見たのは、これが初めてだったかもしれない。濃いベージュ色をした薄手のコートの中には白いシャツと制服より少し長めのチェックのスカート、そこからのびる素の両足は
「とゆーわけで、ま、もう少しゆっくりしようか」
「……」
舞は無言で再びコートを脱いで椅子に座り、俊雄は惚けていた自分に気づいて顔を赤らめていた。
「で、できれば説明して欲しいんだけどなー」
雅樹に振り回されっぱなしの三人とは違い、舞は紅茶をすすって雅樹にそう訊いた。
「説明……」
雅樹は横を向いて、ただただ神妙に何かを聞き始めた。そして、その顔は次第に難しくなっていった。
「うーん」
そして、腕を組んでうなり、再び横を向いた。
「それ、全部説明すんの大変だな」
「めんどくさがりやだし……」
ずずと舞は紅茶をすすった。