「左さんは、いつ頃復帰できるの?」
「先生はあと半月ほどだって言ってた」
「意外だね、まるで人間みたいだ。リシュネも、左さんのこと、人間だと思う?」
今度は、リシュネが黙る番だった。カプセルとカプセルの継ぎ目にあるステップにリシュネは乗り、スイッチを入れる。ステップは上がっていき、カプセルの上にあるスペースへと入っていく。
「質問を変えるよ。<選ばれし者>の君には、左さんは自分の正体を証さなかったのかい?」
少年は、追うように自分の前にあるステップへと乗って、上がっていった。
「洋一が私に話してくれたことの中には、私が<選ばれし者>故の話もある。それは当然、<選ばれし者>にしか話せないこと」
「僕にも?」
「もちろん」
そうはっきり言って、カプセルの上の小さなスペースへとリシュネは入る。照明がひとつしかないその部屋の中で、リシュネはボディスーツを脱ぎ始めた。
「実際、その<選ばれし者>ってなんなの? バージョンは僕の方が高いのに」
少年もカプセルの上の密室へと入り、ボディスーツを脱いで、指定されたバケットに投げ入れた。壁に取り付けられたパネルを操作すると、イスが現れる。
「ディルトも、<選ばれし者>よ」
「なんだって!?」
少年は一度座ったイスから立ち上がって叫んだ。リシュネはイスに座りながら、語った。
「私にも、<選ばれし者>がいったい何なのか、どういう意味があるのか、なぜ私が選ばれたのか……洋一は、何も語ってくれない」
「僕達は、何のために存在しているんだろう」
思わずリシュネは、声のする少年の方を向いた。
「僕達から見れば、助けてもらえたのは、確かにうれしい。けど、左さんから見た僕達の存在意義、それは何なのだろうか……」
「洋一は、ファインダウト社のバックに何かがあると言っていた」
「確か、左さんはあそこには、どこかの企業から派遣されてきた、そう言っていた」
「そこから離れて、ファインダウト社を作って、私達の面倒を見ている」
「こんな維持費の掛かるペットを飼って、どうしようっていうのかな」
「考えても仕方ないじゃない。私達は洋一に恩がある。それで十分よ」
少年は、それほどの恩ではないと確信していた。が、洋一は裏切れても、リシュネは裏切れなかった。
「そうだね……お休み」
「お休み」
再びスイッチを押すと、イスは下がっていく。いつの間にか不透明になっているガラスに包まれて、ふたりは目を閉じた。下から溢れてくる透明の液体に身を沈ませる。
いつの日か……夢さえも見ない眠りへと、ふたりはついた。
「先生はあと半月ほどだって言ってた」
「意外だね、まるで人間みたいだ。リシュネも、左さんのこと、人間だと思う?」
今度は、リシュネが黙る番だった。カプセルとカプセルの継ぎ目にあるステップにリシュネは乗り、スイッチを入れる。ステップは上がっていき、カプセルの上にあるスペースへと入っていく。
「質問を変えるよ。<選ばれし者>の君には、左さんは自分の正体を証さなかったのかい?」
少年は、追うように自分の前にあるステップへと乗って、上がっていった。
「洋一が私に話してくれたことの中には、私が<選ばれし者>故の話もある。それは当然、<選ばれし者>にしか話せないこと」
「僕にも?」
「もちろん」
そうはっきり言って、カプセルの上の小さなスペースへとリシュネは入る。照明がひとつしかないその部屋の中で、リシュネはボディスーツを脱ぎ始めた。
「実際、その<選ばれし者>ってなんなの? バージョンは僕の方が高いのに」
少年もカプセルの上の密室へと入り、ボディスーツを脱いで、指定されたバケットに投げ入れた。壁に取り付けられたパネルを操作すると、イスが現れる。
「ディルトも、<選ばれし者>よ」
「なんだって!?」
少年は一度座ったイスから立ち上がって叫んだ。リシュネはイスに座りながら、語った。
「私にも、<選ばれし者>がいったい何なのか、どういう意味があるのか、なぜ私が選ばれたのか……洋一は、何も語ってくれない」
「僕達は、何のために存在しているんだろう」
思わずリシュネは、声のする少年の方を向いた。
「僕達から見れば、助けてもらえたのは、確かにうれしい。けど、左さんから見た僕達の存在意義、それは何なのだろうか……」
「洋一は、ファインダウト社のバックに何かがあると言っていた」
「確か、左さんはあそこには、どこかの企業から派遣されてきた、そう言っていた」
「そこから離れて、ファインダウト社を作って、私達の面倒を見ている」
「こんな維持費の掛かるペットを飼って、どうしようっていうのかな」
「考えても仕方ないじゃない。私達は洋一に恩がある。それで十分よ」
少年は、それほどの恩ではないと確信していた。が、洋一は裏切れても、リシュネは裏切れなかった。
「そうだね……お休み」
「お休み」
再びスイッチを押すと、イスは下がっていく。いつの間にか不透明になっているガラスに包まれて、ふたりは目を閉じた。下から溢れてくる透明の液体に身を沈ませる。
いつの日か……夢さえも見ない眠りへと、ふたりはついた。