KAB-studio > 風雅、舞い > 第四章 ふたりの勇者 (3)
風雅、舞い - 第四章 ふたりの勇者 (3)
 戦わなきゃいけないんだなぁ、そう思うと、逆に戦いたい、思いっきりその力を出し切ってみたい、そうも思う。
 舞はママチャリを玄関前で止め、家の門を開ける。と、ポストに突き刺さる真っ白な封筒を見つける。宛先を見れば、「結白 舞様」と書かれている。コミックスサイズの長方形、宛先は黒のペンで書かれた手書き。その雰囲気にそぐわない、「料金別納郵便」のマーク。
 裏を見て、目を見張った。差出人は「ファインダウト社」。
「敵からのファンレター、ってところかな」
 自転車を家の庭に止めて、封筒を様々な角度から見ながら家の中へと入る。厚みはなく、金属が入っている形跡もなく、どう見ても爆発物やかみそりが入っているようには見えなかった。とにかく普通の封筒だった。
「護符? まさかね……」
 家の中には誰もいない。封筒を眺めながらひとりぶつぶつつぶやき続ける。そういえば昔、こんな風にひとりぶつぶつつぶやきながら、光が当たると燃え出す護符とか作ったなぁ……。そんな寂しさも感じながら、留守番電話を見れば、一件録音されていた。
<おー俺だ、舞の所にも封筒来てるか? あとから行くからな、じゃな>
 録音時刻は午前九時半になっていた。
「暇人……」
 ふと、「あとから」という意味を着替えながら考える。私があのマンションの下に来たとき、穂香さんが私を見つけたと言っていた。もし本当に穂香さんがいるというのなら、私は今、彼女に見られているのだろうか……。雅樹は、そのこと訊いたりするのだろうか……。
 頬が自然と赤くなり、妙な妄想が奇妙な気分へと駆り立てる。そういえば、制服からこういう普通の服に着替えること、珍しい……。
 そんな考えを振り払うように、封筒の上側をハサミで切った。雅樹と会ったとき、話が合わないというのではあまりにも恥ずかしい。
 封筒の中には、一枚の紙が二つ折りにされて入っていた。ダイレクトメールとはまったく違うその簡潔な内容に、舞はまず驚いた。

前略、結白 舞殿。
弊社では、貴女の力を必要としております。
7月1日午前11時半、
あなたと初めてお逢いしたあの公園でお待ちしております。
ファインダウト社代表取締役 左洋一
「へ、平日の午前中……」
 巧みな心理攻撃か、それとも単なる嫌がらせか、とにかく頭が痛くなるには十分な内容だった。

 検索