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風雅、舞い - 第四章 ふたりの勇者 (4)
「どうする? 俺ひとりで行ってこようか?」
 ファミリーレストランでふたりは封筒を交換して読みあっていた。
 場所を選んだのは舞だった。どうやら正解だったらしく、夕方前で客は少ないうえ、雅樹もそれほど目立ってはいないようだった。
「ううん、私も行く。どんな用があるのか分かんないけど、とりあえず、あの人達と話くらいしてみたいかな」
 三角に切ったホットケーキにぱくつきながら、そう言った。
「よくは判らないが、あいつらは、俺達と敵対しようとは思ってないようだな」
「あの子供たち?」
「ああ。一緒にいた化け物、あれが本当の敵なんだろうな。ま、猫かぶって近寄ってくるヤツも結構怪しいけどな」
 そう言って、雅樹はチョコパフェを食べる。食べる度に、窓側に空けているひとり分の空間と話をする。
「……なんで、私たちなのかな」
 舞の、その苦笑いに戸惑いながらも、雅樹は考えた。
「そうだな……そういや、なんでなんだ?」
 雅樹は隣に訊く。そして、答を聞いて納得する。
「泉の力を持ってるからじゃないか、とさ」
「じゃぁ、私たち以外の<泉の力を受け継ぐもの>は?」
「ああ……」
 雅樹のその表情ははっきりしていなかった。
「……他の泉の場所とは交流がないんだ。俺がおまえんとこ行ったのも偶然だったし、結白さんも他の泉のことは知らないって言ってた」
「じゃぁ、他の人達も、私たちのことを知らないんだ。何かが起こりつつあることも」
「いや、そういうことじゃないと思う」
「え?」
 雅樹は、顔を背けるように外へと目を向けた。
「多分、力を持つのは俺達だけだ。<力を受け継ぐもの>は必ずしも存在するわけじゃない。もし、誰も受け継ぐことなく百年も二百年も経ったとしたら……」
 舞には、その状況が手に取るように分かった。もし自分がかつていた碧き泉で、その泉の力を信じられなくなったら――あのような場所に長く住み続けることは、並大抵の努力ではかなわない。
「でな」
 気付けば、雅樹は舞を見つめていた。そのことに突然気づいて舞は少し驚いた。顔を少し赤らめて。
「な、何?」
「穂香と相談した結果だな、七月になったらおまえん所の泉に行って来る」
「母さんの所?」
「ああ。結白さんの所に行けば、泉の場所くらいは判ると思うんだ。そしたら、残りのふたつの泉も回ってみる」
「……ふうん」
 最後の一切れを食べながら、そう言うことしか舞にはできなかった。
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