ディルトがゆっくりと降りてくる。洋一はその場に近づき、背広を脱いで肩に掛けた。見上げるようにして見せるディルトの表情は、子供のように怯えていた。
「すまなかったな。この埋め合わせは必ずしてやるから。今は、先生の所に行って、ゆっくりお休み」
ディルトは力無くうなずく。智子も近づき、ディルトの肩を抱く。
「頼みます」
智子はうなずき、ディルトを車へと運ぶ。その後ろ姿を見送ったあと、洋一は背筋をただして舞と雅樹へと向き直る。
「さて、君達の力はよく分かった。早速、本題へと移ろう」
かなりの距離を取っていた舞と雅樹が近づいてくるのを確認してから、洋一は車に乗り込む。
「話は車内で、だ」
少年とリシュネも乗り込む。雅樹は幾分訝る。
「大丈夫でしょ、それにあたし疲れたもん」
舞はその考えを否定して、車に乗り込んだ。全員の中でもっとも長身の雅樹が、体を縮めるようにして乗り込む。車は走り出し、雅樹はそれが帰り道かどうかチェックしているようだった。
「さてと、自己紹介からいこうか。彼は、自分の名前を呼ばれることを嫌がるから気を付けるようにね」
「もちろん、僕が言わなければ言うこともないだろうね。僕のことは適当な呼び方していいよ」
「じゃぁ少年A」
「え”……」
「ぷっ……」
思わず吹き出したリシュネに視線が集まって、リシュネは顔を赤くする。雅樹は自分の言ったことの反応に驚いていた。
「穂香さんのアイディア?」
「いや、違うんだけどな……」
「次は、リシュネかな」
「あ、ええと、私はリシュネ・アインヴィーゲン、15歳」
「そいつよりよっぽど親切だな」
「そいつって呼び方はないでしょう」
「でも名前言わねぇのに」
「まぁまぁ。私は結白舞。ふたりとも知ってるだろうけど、一応普通の高校生」
「その実、碧き泉の力を受け継ぐ者ってわけだ」
「そういうこと。で、雅樹と穂香さんの紹介」
舞はいつものこととあきれた感じで継ないだが、少年とリシュネは明らかに妙な表情を見せていた。
「ったく、そういう言い方はないよなぁ、な? ま、いっか。俺の名は朴雅樹、朱き泉の力を受け継ぐもの。年齢はひ・み・つ」
「何それ、僕のまね?」
「違う違う、ものすごい若作りなんだよこいつ。ホントは百歳くらいなんだから」
「バカ、んなわけないだろ。んと……いくつだっけ、ああ、ホントは今年でちょうど七十歳なんだ」
この妙なやりとりに、少年とリシュネのふたりはまだ慣れていなかった。
「んでだ、さっきからちょくちょく俺が相談してる相手を紹介しよう。柊穂香、俺のパートナーで奥さんで女神様、ってところかな」
と、窓の外を指し示して言う姿は、馬鹿にされてるんじゃないかと思えるものだったが、舞と雅樹の表情はそう見えなかったし、少なくとも舞はあまり嘘のつけない人物だという情報は持っていた。
「すまなかったな。この埋め合わせは必ずしてやるから。今は、先生の所に行って、ゆっくりお休み」
ディルトは力無くうなずく。智子も近づき、ディルトの肩を抱く。
「頼みます」
智子はうなずき、ディルトを車へと運ぶ。その後ろ姿を見送ったあと、洋一は背筋をただして舞と雅樹へと向き直る。
「さて、君達の力はよく分かった。早速、本題へと移ろう」
かなりの距離を取っていた舞と雅樹が近づいてくるのを確認してから、洋一は車に乗り込む。
「話は車内で、だ」
少年とリシュネも乗り込む。雅樹は幾分訝る。
「大丈夫でしょ、それにあたし疲れたもん」
舞はその考えを否定して、車に乗り込んだ。全員の中でもっとも長身の雅樹が、体を縮めるようにして乗り込む。車は走り出し、雅樹はそれが帰り道かどうかチェックしているようだった。
「さてと、自己紹介からいこうか。彼は、自分の名前を呼ばれることを嫌がるから気を付けるようにね」
「もちろん、僕が言わなければ言うこともないだろうね。僕のことは適当な呼び方していいよ」
「じゃぁ少年A」
「え”……」
「ぷっ……」
思わず吹き出したリシュネに視線が集まって、リシュネは顔を赤くする。雅樹は自分の言ったことの反応に驚いていた。
「穂香さんのアイディア?」
「いや、違うんだけどな……」
「次は、リシュネかな」
「あ、ええと、私はリシュネ・アインヴィーゲン、15歳」
「そいつよりよっぽど親切だな」
「そいつって呼び方はないでしょう」
「でも名前言わねぇのに」
「まぁまぁ。私は結白舞。ふたりとも知ってるだろうけど、一応普通の高校生」
「その実、碧き泉の力を受け継ぐ者ってわけだ」
「そういうこと。で、雅樹と穂香さんの紹介」
舞はいつものこととあきれた感じで継ないだが、少年とリシュネは明らかに妙な表情を見せていた。
「ったく、そういう言い方はないよなぁ、な? ま、いっか。俺の名は朴雅樹、朱き泉の力を受け継ぐもの。年齢はひ・み・つ」
「何それ、僕のまね?」
「違う違う、ものすごい若作りなんだよこいつ。ホントは百歳くらいなんだから」
「バカ、んなわけないだろ。んと……いくつだっけ、ああ、ホントは今年でちょうど七十歳なんだ」
この妙なやりとりに、少年とリシュネのふたりはまだ慣れていなかった。
「んでだ、さっきからちょくちょく俺が相談してる相手を紹介しよう。柊穂香、俺のパートナーで奥さんで女神様、ってところかな」
と、窓の外を指し示して言う姿は、馬鹿にされてるんじゃないかと思えるものだったが、舞と雅樹の表情はそう見えなかったし、少なくとも舞はあまり嘘のつけない人物だという情報は持っていた。